「御狐神」は自分が気付いていない程に、速く駆け抜けていた。
普遍の者からすると、ソレは人間のソレではなかった。
彼の中から溢れ出す程の感情が、脳内物質を過剰に分泌させ、身体中を駆け巡って、筋肉を、関節を、眼を、耳を、鼻を、口を、総てを覚醒させる。
恐ろしい速度を排出する身体と同時に、感覚を司る器官であらゆる情報を読み取り、脳で解析していく。
ソレ等は総て、「紗代」を探し出す為に酷使されている。
彼女が囚われた彼女と自身の寝倉に近づくに連れて、彼女の匂いを感じる様にしているなり、近くになればなる程匂いは濃くなっていく。
その匂いは、かつて「御狐神」が想っていた少女の匂いに似ていた。
あの時の想い出が、脳内を襲ってくる。
その想い出と言う名の鎖が彼を束縛し、罪と言う彩りを添えて苦しめていく。
だが、今、その想い出の苦虐が副産物として身体中を袞らせた。
「御狐神」「ガアアアアアッ!!」
文字通り、肉食獣の咆哮を揚げる。
ソレが更に彼を覚醒させていく。
そして、彼は気付いていた。
「紗代」の匂いと供に漂う匂いを。
雄獸の匂い。
自分と同じく先祖帰り、
妖怪の匂いだ。
雄獸と彼女をブレンドさせた匂いは、近付いていく寝倉からズレていく。
「御狐神」は、その匂いを追っていく。
この匂いこそが、今現在、最も有力な手掛かりだ。
匂いを辿って行く内に辿り着いた場所。
そこは、「紗代」の勤め先の数件隣にある雑居ビルだった。
古くカビ臭い雑居ビルから漂う不穏な匂いから、「御狐神」は「紗代」と雄獸の匂いを嗅ぎ分け、その匂いを感じながら、階段や通路を、獲物を追い狩る狐の様に速く駆ける。
ある一室に辿り着いく。
其処から漏れる匂いに導かれる様に、扉を開ける。
其処には、「紗代」がいた。
彼女は生きている。
身体は弛緩し、瞳は虚ろで、壊れて崩れている人形の様になっているが、生きていた。
彼女の衣服は乱れており、薄汚れ、痣や傷が侵食している身体の所々を露にしていた。
そして、隣には男が立っていた。
あの匂いの男だ。
雄獸に相応しい体格を持った、剛健なる男である。
その拳は、使い込まれて馴染んだ分厚い革に包まれた鉄塊の様だ。
尋常ではない精気が、身体から溢れ零れている。
そんな彼に対し、「御狐神」は身体の筋肉をバネにして飛ぶと同時に短き咆哮を吐き出す。
「御狐神」「グワアッ!!」
「御狐神」は、その強力なる雄獸に襲い掛かり、大きく、速く、強靭く、その拳を振り抜いた。
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ひぐらしのなく頃に~神殺し編~
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