庭の椿 | studio lib blog

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Studio Lib momoのブログです。
作品や日々の素敵な出来事綴ります。



久しぶりのブログ投稿です。 

昨日の夕暮れ時。
工房の前でばったりと、ちょっとしたご縁で長く良くしてくださっている奥様と会った。
ああ、やっと会えた、というような面持ちで、会うなり私の手をぎゅっと握ったまま、旦那様が半年前に旅立ったと。
道端でたまさか会ったら言おうとは思っていたんだけど、わざわざ伝えるのは止めてたのよ。
いかにも奥様らしいんだ。

でも、握った手からひしひしと、お心は伝わってきていた。

昔、よくご夫婦で行きつけの日本料理店や美味しいお店に連れて行って頂いたりしていた。
逆に私がお礼を兼ねて行きつけのジャズバーへお連れしたりと、お子様のいないお二方は、娘のように可愛がってくださっていた。
ジャズを聴きながら、美味しそうにお酒を飲んで、とても嬉しそうにしていたお二人のお顔は忘れない。

あるときは、お宅にお邪魔してお友達もどうぞ、とお庭でバーベキューでもてなしてくれたり、
あるときは、お正月に遅くまで制作で工房を開けていると、おめでとう!、とお二人で入っていらして(もう少し酔っているお二人)、取って置きの日本酒があるので一緒に飲みましょう、とお引き止めして一緒にちびりちびりと飲んだりして。

その時制作していた銅のコーヒー掬いを見て、お父さんが、これいいね、と言って二本も注文して下さったり。
奥様は、毎年、姪御さんの誕生日にはいつも私の作品を求め贈ってくださっている。

今年の6月、いつものように姪御さんのプレゼントを選びにいらっしゃったとき、実はお父さんの具合が良くなくて、バタバタしているから、ももちゃんに全部任せたから申し訳ないけど送るのまでやってもらえる?、と言って忙しなく工房を後にされた。
そのあとメールで、姪御さんがプレゼント喜んでいて、次の火曜に会うのよ、と最後のメールを頂いた。
昨日伺ったら、その日にお父さんが旅立たれたそうだ。

昨日はそれから、いろんな思いが寄せては返して、なんとも気持ちが沈んでしまい、普段用事がなければ電話を自分からしないのだが、母に聞いて欲しくて電話した。
一通り話したら、少し気分も落ち着いて、まあ、楽しいことだけでなくて、悲しみやいろんな感情がある方が作品づくりも深みが増すんじゃない?、と母らしい励しをもらい、聞いてもらって有り難いな、としみじみと思いました。

今日、あらためてお線香をあげに伺いました。

部屋に入ると、お父さんの祭壇とお写真が目に飛び込んできて。
遺影のお写真を見て、ああ、本当にもういないんだな、と、急に実感が湧いてきて。
笑顔でこちらを見ているお父さん。
ももちゃんのこと大好きだったからすごく喜んでると思うわ、と奥様。

お二人との色々な思い出が甦りました。

その後、お茶を頂きながら故人を偲び、奥様の積もるお話を伺いました。

昨日より元気に見えましたが、それは予め私が来るとわかって気丈にしているのだろうな、と、昨日手を握っていたお母さんが本当だろうな、と心のなかで思いました。

帰り際、縁側から見える充分な広さのお庭には、桃色と赤い椿が並んでいて、小鳥が椿の花をついばむと、花びらがはらはらと落ちていました。