Queen 26 | QUEEN考察

QUEEN考察

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1990年2月。
英国を代表する音楽賞、「Brit Awards」ブリット・アワード音楽賞において、Queenは「英国の音楽に対する傑出した貢献」を称える功労賞を受賞します。

遅過ぎるほど「当然」とも思える受賞でしたが、ロンドンのドミニオン劇場で開催された授賞式には、バンド全員が出席しました。



この時、フレディがスピーチを行なうことはなく、ブライアンがスピーチを行いました。

「グループを代表してBPIの皆様に感謝を申し上げます。そして、おそらく何より重要なのは、これまで我々を支えてくださった他の皆様かもしれません。なぜなら、そういった皆様のおかげで、我々は芸術と呼ぶものを自由に追求し、時には非常に不確かに見えた危ない橋を自由に渡ることができ、僕らがその橋から落ちることはなかったからです。そして、ついにこの賞をいただくことになり、最高です」




普段であれば、これはQueenのフロント・マンであるフレディの役目でした。
しかしこの時、いつものように雄弁に語るフレディの姿は最後まで見ることが出来ませんでした。

ステージを去る際、フレディが語ったのは・・・

「ありがとうございます。おやすみなさい」

ただそれだけでした。



結果としてこれがフレディ・マーキュリーが公の場に姿を現した最後の場になりました。

体調が良くないことは、撮られた写真からも伝わってきますね。


英国ロックのカリスマ ロッド・スチュワートとフレディ
翌年ベストアルバム賞を受賞することになるジョージ・マイケルとフレディ






1991年1月。
フレディ・マーキュリー存命中にリリースされた最後のアルバム「INNUENDO」(イニュエンドウ)。




本来なら1990年のクリスマス期に合わせたリリースを目指していましたが、フレディの体調不良により完成の延期が余儀なくされていました。

でも、そのような事情は本作のクオリティや、4オクターブを超えるフレディのボーカルパワーからは窺い知ることさえ出来ません。

しかし、フレディの逝去後に出されたドキュメンタリー・ビデオ「輝ける日々」を見て、ファンは愕然とするのです。




これほどまでにフレディの病状は酷かったのかと・・・

このような状態であのハイトーンボイスとパワフルな歌声を出せるなんて。。。

震える思いでした。




このアルバムの中でも鬼気迫る歌唱をみせているのが、映画「ボヘミアン・ラプソディー」のエンド・ロールで流れている
「The Show Must Go On」(ショー・マスト・ゴー・オン」




アルバムリリース後のミュージック・ビデオは1981年から1991年までのクイーンの楽曲のプロモーション・ビデオを組み合わせて作られ、曲のイメージとは反対にユニークな作りになっています。
フレディの体調が芳しくないため、既存の素材を編集したものになったと伝えられています。


この曲を作曲したブライアンは、概案がまとまった当初、この曲はフレディには音が高すぎて歌えないかもしれないと考えていました。

しかし、ある日フレディのところにブライアンがデモを持っていったところ、フレディはとても気にいって、「ダーリン、僕はこの曲に全てを捧げるよ」と語ったという逸話があります。


歌詞と自分の置かれた現実が重なったのかもしれません。
もしくはブライアンからのエールだと受け取ったのかもしれませんね。

フレディは迫り来る最後の時を肌で感じながら、全身全霊でこの曲を完成させたのです。

まだステージから降りる訳にはいかない。
幕は上がったんだ。
ショウを続けるぞ!
命ある限り・・・

ブライアンは数あるQueenの楽曲の内、この「 The Show Must Go On 」でのフレディの歌唱が生涯最高のものだったと評しています。
これは多くのQueenファンにとっても異論はないでしょう。


また、「体調が悪化するほど、レコーディングへの意欲が高まっていくようだった」と、ドキュメンタリーの中でロジャーは明かしています。

「自分自身に何かを課すことは、立ち上がるための理由になった。だから彼は可能な限りどこにでも現れた。実際、この時期はかなり集中して仕事をした」


リリースから2週間、「イニュエンドウ」の評判が思いのほか良いと知ったフレディは、鉄は熱いうちに打てと言わんばかりに、新作の制作に取り掛かるようメンバーにハッパをかけます。

曲を書いてよ。
もう長くないってわかってるんだ。
どんどん詞を書いて。
どんどん曲を書いて。
僕は歌うから。
きっと歌う。
後は好きなように使って、仕上げてよ。

残り少ない人生と理解しながらも、命を削るようにアルバム製作に没頭したとブライアンはドキュメンタリーで語っています。


そんな背景からその後のアルバム「Made in Heaven」(メイド・イン・ヘブン)は生まれます。



ハイライトとなる「マザー・ラヴ」は、フレディが亡くなるほんの数週間前にレコーディングされたものです。

歌詞の中で「死ぬ前に安らぎが欲しい」とフレディは心情を訴えています。

でも「イニュエンドウ」が持つ曲のトーンや背景から考えても、フレディが本当に残したかった言葉は、この「イニュエンドウ」にあるラストナンバー、「ショウ・マスト・ゴー・オン」の中にあるのではないか?と私は思うのです。


ちなみに、アルバムタイトルの「イニュエンドウ」とは
( ほのめかし ) ( あてこすり ) ( 風刺 ) などの意味があり、フレディがアルファベットを並べて言葉を作るボードゲーム「スクラブル」をする際によく使う単語でした。





フレディ・マーキュリーは「僕はスターにはならない。伝説になるんだ」とよく語っていました。

それは僕らの望んだ形の伝説ではなかったけど・・・

それでも天を仰ぐと、フレディは優しく微笑んでいるような気がするのです。

全てをやりきった、格別の笑顔で。