昨日の続きです。
「基本動作Ⅰ(きほんどうさいち)」に登場する動きについてお話ししたのが昨日のブログですが、その動作を武技として活用すれば、ということをテーマにお話しするのが今日のブログです。
その具体的な内容はタイトルに記してありますが、一般稽古ではお話ししたことはありません。「受け」の部分に特化した説明にしていますが、研究稽古の場合、そういったことにも他の展開があるのではないかということを考え、実際に行なってみることがあります。
そういう事例を知ることで、これまで単純な目でしか見ていなかった動きにも留意するようになり、考え方の広がりが期待できるようになります。
新しく研究稽古に参加した道場生の場合、初稽古でそういうところを理解してもらうことで今後のレベルアップにつながれば、と期待するところですが、それには時間を要します。
初稽古ということで、何もかも珍しい体験になったかもしれませんが、それが千唐流空手道に対するさらなる興味に繋がることを願っています。
という前フリの後、具体的な稽古の内容についてお話ししていきましょう。
今回は初参加の道場生に写真のモデルになってもらいました。ご覧いただいている通り、文字通り大人と子供の身長差が明確に出ていますが、今年から中学1年生です。これから背も伸びることになるでしょうが、大人とペアを組むことで、体格差に関して気後れしないようになることを期待します。
ここでは子供が技を掛ける立場で撮りました。
そのため、右側の大人が仕掛けていますが、写真は相手の前手を掴んだところです。左側を前にしていますが、それに対して右手で手首を掴んでいます。
実戦でこういう場合、変に緊張して身体が硬直してしまうと技を掛けにくくなります。稽古は実戦ではないので掴まれた側の緊張は感じませんでしたが、そのままの感じでいてもらえれば、という状態でした。
ただ、武技に必要な最低限の筋力についてはまだ子供なので期待する方が無理なのですが、稽古を通じて武術体を練り、リアルに使える状態に昇華してもらえればと願っています。
掴まれたところを拡大した写真です。背腕側から掌で包むような感じになっている様子がお分かりいただけると思います。
こういう時、掴む側の握力も関係することになりますので、相手と自分の間に著しい力の差がある場合は返せない可能性があります。
写真の組み合わせの場合、それが懸念される一例になりますが、稽古ですからそういったところで変に意地になる必要はありません。武技の理を学んでもらうのが稽古の目的なので、この組み合わせではその意識でやってもらいます。
ただ、大人同士であれば話は別になり、研究稽古という性質から掴み方の質向上も意識されます。そういう場合は、掴み方のポイントについても説明し、最初の場合と異なるシチュエーションを経験してもらいます。
そういう状態でも返せる技法をアドバイスしますが、そういった矛盾の故事のような稽古をするのが研究稽古であり、だからこそ同じ技の稽古でも、いろいろと続いていくわけです。
掴まれた後の対応ですが、ここが昨日お話しした動作に関係してくるところです。
「基本動作Ⅰ」の場合、「突き」、あるいは「受け」の状態から前足を1歩引くことになりますが、上の写真をご覧いただければお分かりの様に、前足を引き、それに合わせて掴まれている上肢も引いています。
単に引くという場合、大抵は上肢の力のみで行なおうとし、結果として自身の姿勢が乱れ、前傾することが多くなります。
これは死に体であり、そこからの展開は望めず、相手にとって有利になります。
だからこそ身体の中心軸をしっかり保ち、全身で引く意識が必要になります。
もっとも、このことも前述した武術体の質に絡んでくることになりますので、歴然として力の差があれば不覚を取ることがあります。
ただ、武術の場合、いろいろな展開・返しがありますので、自他を比較し、考えた技が無理と判断した場合、他の方法に切り替えるということも学ぶ必要があります。この技を学んだから他の技は使えない、ということではないのです。武術的思考というのは、頭の柔軟性もあるわけで、こういうところは稽古の過程で示していきます。
足と上肢を1歩引いた様子を別アングルから見た写真です。
いつもお話ししているように、こういうことで説明している技を立体的にイメージしてください。
引っ張り込んだ後に続く動きですが、それを示しているのが上の写真です。
右上肢が相手の上肢に絡んでいるように見えますが、このアングルではよく分かりません。
ということで、反対側から撮った写真を2枚連続でアップします。
最初の写真は単に相手の上肢に対して下方から巻き込むような感じで接触している様子ですが、2枚目の写真は上腕を締めている様子が伺えます。
前腕の接触点は相手の裏肘になりますが、この状態で前腕を絞るように動かすことで関節が極まります。
基本で「外受け(そとうけ)」を稽古する時、あるいは「基本動作(きほんどうさ)」や「基本型(きほんかた)」、「形(かた)」として稽古する際、呼吸法を伴うことが多くなりますが、そこで培った身体操作は、こういうところで活用されることになります。今回の稽古で、その具体例を知ってもらったわけですが、そこから身体の締めに対する意識を深めてもらうことを期待しています。
また別アングルから撮った写真ですが、相手の肘関節を極めたい場合、全身の動きを加味することになります。
前の写真では分かりにくかったかもしれませんが、ここでは相手の肘関節をよりしっかりと極めようと、腰を活用している様子が見て取れます。
こういう状態にしようという場合、下肢にもそれなりの負担がかかりますが、写真のモデルになった道場生の場合、先日のブログでもお話ししたように下肢を痛めています。
ですから、今回「蹴り」は用いませんでしたが、土台の部分のことがリアルに分かったところがあるのでは、と考えています。
稽古の合間に脚を動かしていましたので、問題個所にかかるストレスを感じていたのでしょうが、視点を変えれば良い体験だったと思われます。
最後に技を極めたシーンを別アングルから撮った写真をアップします。
ご参考にしていただければ幸いです。
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