$プロレス見ながらアメリカ旅 【フリーバーズのアメリカ旅行記】



アメリカ50州を日本流に五十音順で並べると、一番最初にくる州、アーカンソー州。
ビル・クリントン元大統領(同州ホープ市出身)が、大統領になる前に州知事をしていたことで知られていますが、アーカンソー州と言われても、そこがどんな州なのか、どこにあるかを知っている日本人は少ないでしょうし、ましてや行ったことのある人はそう多くはないはず。おそらく、アメリカ人ですらも。
そんなアーカンソー州の州都リトルロックに、WWEの特番「No Mercy 2002」を見るためだけに行ってきました。



2002年10月19日の土曜日、「No Mercy 2002」開催の前日、その前に訪れていたニューヨークからリトルロックに到着しました。
大都市ニューヨークの騒々しさとはまったく違った、アメリカ南部の地方都市らしい静かな雰囲気の街です。そんな街で、行われる「No Mercy 2002」のメインは、若き王者ブロック・レズナーに、アンダーテイカーが挑戦するWWE王座戦。なんと試合形式は、最も過激過酷な金網デスマッチ、ヘル・イン・ア・セルでの完全決着戦!こんな静かな街で、無慈悲で残虐な試合が行われるという、そのコンストラストがこの試合をより意味深いものとさせていました。

レズナーの鍛え上げられた強靭な肉体、荒ぶるパワーファイトも凄かったのですが、何よりもテイカーの大流血ファイトには背筋が凍るくらいの凄味がありました。“デッドマンの遊び場”と言われるくらい、得意とする試合方式だけに、試合は常にテイカーのペースで進んでいましたが、試合前に右手を負傷させられていたこともあり、結果的には、“次世代の大物”レズナーが勝ち、勢いを見せつけた格好となりました。

放送は、金網の上でベルトを誇示する若きチャンピオンの勇姿で終わり、敗れたテイカーがそれを真下で、リングの上に大の字になりながら見ていた光景が印象に強く残っています。
レズナーが控え室に戻った後、リング上には血まみれになったテイカーだけが残されたのです。テイカーは誰の力も借りず、自力でゆっくりと起き上がり、フラフラとしながら歩いて花道を戻っていきました。会場の観客からは負けたテイカーへ、勝ったレズナー以上の拍手が起こったのは言うまでもありません。



試合後、会場近くのホテルへと戻り、バーのカウンターでその日知り合った地元のファンたちと談笑していると、ホテルの前に一台のリムジンが止まりました。運転手が後部座席のドアを開けると、なんと中にいたのは、先ほどの凄惨な試合を終えたばかりのテイカーだったのです。
体中が痛いのでしょう、なかなか車を降りることが出来ないようでした。傷めていた右手は氷で冷やしていて、また、腰を痛めたのか、足が痛いのか、歩くのもとても辛そうにみえます。

ちょうど、その時ディーボンがホテルに戻ってきました。ホテルのドアが自動ではなかったため、ディーボンがドアを開けてテイカーを先にホテルの中へと誘導したのですが、その時、テイカーは今までの険しい顔がゆるみ、ディーボンに笑顔で礼を言いました。それを笑顔で返すディーボンの表情もまたよかったのが、とても印象に残っています。

ホテルの中へと入ってきたテイカーは、チェックインのサインをするのも困難なほどの大きなダメージを負っていました。あの大流血試合の身体的代償は大きかったようです。
私も含め10人ほどのファンがいたのですが(日本人は私一人だけでした)、さすがにその場でサインや写真を頼むファンは誰もいませんでした。

途中、テイカーは苦痛をこらえ、何度も表情をゆがめていました。もう誰も言葉を発することができない静粛のなか、ただ、テイカーの痛々しい吐息だけが真夜中のホテルのロビーで聞こえていました。ようやくチェックインを終えたテイカーは、部屋の方へと向かって、ゆっくり、一歩、また一歩と、私たちの前を歩いていきました。

その時、期せずして、見守っていたファンの一人が拍手をしだしました。残りの私たち全員もそれに続き拍手をし、まるでスタンディングオベーションのような感じになりました。
拍手のなか、私たちの前を通り過ぎ、部屋のある廊下の角を曲がろうとしたテイカーでしたが、ふとその場で立ち止まり、そして、私たちの方をゆっくりと振り返り、「ありがとよ」と言わんばかりに左手を挙げ応えてくれたのです。

たった10人だけの拍手でしたが、その数時間前に、会場で聞いた拍手よりも大きい歓声に聞こえました。ホテルの長い廊下を歩いていくテイカーの後ろ姿を見ていたら、目頭が熱くなってきたのを、今でも覚えてます。
試合を見て感動をもらい、また試合後のホテルでも感動し、まさに最高のボーナストラックをもらったリトルロックの夜でした。







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ニューヨークでの、ブロック・レズナーのサイン会



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リトルロックのホテルで。クリス・ベノワと。



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チャボ・ゲレロ


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エッジ


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ディーボン


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エリック・ビショフと力強い握手。サインを頼んだら、「OGENKIDESUKA」と書いてくれました。


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WWEの機材を運搬している大型トラックの運転手さん。シブい人でした。


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ジョン・シナ




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2002年10月編
おわり





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