銀魂夢小説 リレー・ラジオ企画 16話
リレー小説企画!!
銀魂高校に通う、「あかり・みなこ・春・ひい」の4人。
それぞれに絡む銀魂キャラクター達。
笑いあり涙ありの、青春ラブコメですヾ(@^▽^@)ノ
田中さん→定春→わたし
の順で進んでおります!
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1話 2話 3話 4話 5話 6話 7話 8話 9話(前編) (後編)
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16話
「誰と、どんな出会い方したら
好きになるんでィ?
是非教えてもらいたいですねィ...?」
ドス黒いオーラとは、このことだろう。
突然聞こえたそんな言葉に、カチンと体が固まった。
その聞き覚えのある声が今まさに話題の中心人物である事に気づくも、
頭をあげる勇気もなくジリジリと後退し始める。
黒いオーラを背負った彼に見下されながら、オロオロと目線を泳がせた。
「お、沖田くん...どうして...」
ぴたり、背中に感じた壁の感覚。あ、完全に追い詰められた。
もう逃げられないと諦めてゆっくり顔をあげれば、やっぱり、そこには怖い顔をした沖田くんがいた。
「昨日からあんたも、春の様子もおかしかったし…朝から女2人でこそこそ教室抜け出して、ちょいと気になったもんでねィ…」
頭を掻きながら、どこか余裕がないようなイラついた様子の沖田くんから目を逸らす。
やっぱり、ちょっと不自然だったかな?!...突然、教室を飛び出したりなんかして。
なんだか私も余裕がなくなって、「き、昨日?えっと、それはあの、えと、」なんて言い淀んでいれば、
「ーーまあ、昨日のことはどうでも良いんですけどねィ?」
ーーそう言って、トン、と。
肩を掴まれ、そのまま壁に押し付けられた。
身動きが取れなくなった私は驚いて彼を見上げる。
さっきよりも確実に近い顔の距離に、目を見開いて口を噤んだ。
「...今、あんたが言った話、詳しく聞かせてもらいやしょうか?」
ーーすごく、鋭い目だった。
まっすぐに私の目を見る沖田くんから、顔がそらせなくて。
こんな距離に追い詰められて、普通ならドキドキうるさくなるはず、なのに。
(沖田くん、そんなに春ちゃんのこと...)
そこまで、春ちゃんの好きな相手が誰なのか気になるなんて。
嫌でも分かってしまうその事実に、ただ心が痛くて、歪みそうになる表情を見られないよう俯いた。
「...痛いよ、沖田くん」
「!!...悪ィ」
慌てたように離れた沖田くんは、行き場のなくなったその掌をぐっと握りしめた。
...そんなに、真剣なんだね。
私が今こうして苦しいのと同じように、きっと沖田くんも苦しいんだ。
ふぅと、息をつく。
ゆっくりと顔を上げれば、眉を寄せた沖田くんと目が合った。
「... 沖田君、心配しないで大丈夫だよ。
沖田君は、春ちゃんの王子様なんだから!」
にっこり取り繕うように笑って、口先からでたのはそんな言葉だった。
沖田くんを安心させたくて、そんな苦しい表情をさせたくなくて。
そして、言ってしまってから、「あ」と口元を押さえた。
「はぁ?王子様?!...あんたいきなり何言ってんですかィ?」
し、し、しまったー!!!!
何言ってんの私!なに口走っちゃってんだよ~!!
慌てて両手で口元を押さえてぶんぶんと顔を横に振る。
そんな私を怪訝そうな目で見た沖田くんは、少し口角を上げて。
「ふーん...」
そのまま私の両手をつかんだとおもえば、ゆっくりと口元から引き剥がした。
「どう言うことか、是が非でも話してもらいやしょうかねィ...?」
ーーーーーー
ーーー
「...と、いうわけで...春ちゃんにとって沖田くんは王子様ってことなんだけど...」
...神様、春ちゃん様...どうか私に罰をお与え下さい...
で、でも、鼻先の距離まで顔を近づけられて、あの沖田くん特有の微笑みを向けられたら!誰だって!!
...なんて、ただの言い訳だよね~。
沖田くんの押しに弱い私は、春ちゃんについてを洗いざらいしゃべってしまいました。
後で春ちゃんになんて謝ったらいいんだろう...。
場所を少し移動して、階段に腰を降ろした私達。
がっくりと肩を落として項垂れていれば、隣に座る沖田くんは何か思いつめたように一点を見つめていて。
「...沖田くん?」
そんな彼の顔を覗きこむ。
沖田くんにとっては嬉しい話のはずなのに、その表情はどこか曇っていた。
「...春、どこに行ったか知ってるかィ?」
「え?えと...銀八先生のところに行くって言ってたけど...って沖田くん?!」
そこまで言いかけた途中で、
突然立ち上がったかと思えばそのまま走り出した沖田くん。
慌てて呼び止めるように彼の名前を叫んでも、それは届くことはなかった。
「...行っちゃった」
階段に座り込んで小さく呟く。
真実を知った沖田くんは、春ちゃんに会って想いを確かめ合うんだろう。
「.....ああ、もう...嫉妬、してるよ」
...そう、嫉妬してる。
私より先に沖田くんに出会って、彼に想われる春ちゃんを羨ましいと思ってる。
うつむけば、ポタポタと足元に涙が落ちた。
嫉妬して涙を流すなんて、そんな自分が惨めで醜くて、悲しくなった。
泣きたくないのに涙は止まらなくて、歯を食いしばる。
こんな顔じゃ、あかりちゃんやみなちゃんにも心配をかけてしまう。
春ちゃんにだって合わせる顔ないよ...。
「...気持ちも伝えないまま失恋なんて、情けないな...」
ぽつりと呟いて、自嘲気味に笑った。
このまま帰ってしまえば楽なのは分かってるけど、私がそんなことをしたらきっと驚かれてしまうだろう。
こんな時に小心者な性格が邪魔をする
あーあ、こんなことなら、恋なんてしなきゃよかった。
「...なんて、さ」
溢れた涙は、目に溜まっては、零れ落ちる。
「まだ、好きでいたいよ...」
静かな非常階段に響く声は、小さく、震えた。
ーーーー
つまらない坂本先生の授業を聞き流しながら、俺は窓の外を眺めていた。
「...はぁ」
...いや、正確に言えば、違う。
見てるのは窓の外じゃなくて、窓に映る、人物を見てた。
気だるそうながらもちゃんとノートを取ってるその横顔に、つい見とれる。
こんなことを言ったらきっと彼女は...ーーあかりは、笑うんだろうけど。
あーあ、最近どうしちゃったんだろ俺。
あかりの横にいつでも居られる優越感に浸っていたら、気づけば彼女が離れていきそうになって。
俺がもがいたところでどうにもなんないことは分かってる。
あかりは、今何を考えているんだろう。
誰を、想っているんだろう。
ぼんやり、窓にうつる横顔を眺める。
あーあ、少しでも、こっち向か...「あ」
ばちり。目があった。
こちらに気づいたあかりと、窓越しに目が合う。
ぱちぱちと驚いたように瞬きをしたあかりは、くすっと笑って。
いたずらに、べーと舌をだして顔をそらした。
(....それは、反則ですよね...)
熱くなった顔を隠すようにして、机に伏せた。
...ああ、もう。
めんどくせぇよ、自分。