マビノギっぽい小説置き場 -2ページ目

マビノギっぽい小説置き場

マビノギ的な内容の小説を書いてるかもよ。
マビノギ知らない人も楽しめるように書きたいのかもよ。

「なあケイゴ、なんか今悲鳴が聞こえなかったか?」
オオガキが立ち止まり、周りを見回しながら言う。
「うん?気のせいじゃないのか?ここに危険なモンスターなんていないだろ」
「頻繁に人も通るから盗賊団なんかもいないしな。気のせいか」
「そうそう。……ん?」
ケイゴの視線が一点に固定され、次の瞬間。
「黄金きのこだあああ!」
叫びながらダッシュしてきのこの元へ駆け寄……、
ドテッ。
転んだ。
「お前…慌てすぎだ、きのこは逃げないだろ」
オオガキが呆れ気味に、転んだケイゴを見ながら言う。
「お、おお。そうだな、きのこきのこ」
起き上がったケイゴは、黄金きのこの方へ歩き出そうとして、言った。
「ない」
その言葉に反応して、きのこのあった方へ視点を移したオオガキも、同じトーンで言う。
「ないな」
ケイゴは服についた土を払いながら、
「気のせいだったワケないよな」
「ねーだろ、俺もハッキリ見てる」
二人は周りを見回すが、やはり見つからない。
「釈然としねーけどそろそろ時間だし、とりあえず戻るか」
オオガキの提案に頷きながらも、ケイゴは未だに辺りを探していた。
「俺の臨時収入が……」



オオガキとケイゴが集合場所に戻ると、ウェリアム達が既に座って、何故か抱き合っていた。
「すげーなウェリ、もう抱き合うほど仲良くなったのかよ」
オオガキが言い、
「おにーさんはな、ウェリが女の子と付き合ってもなんとも思わないから安心しろ」
ケイゴが続けた。
「ち、違うわ!」
ウェリアムがケイゴの顔面目掛けてキノコを投げ付けるが、ケイゴは片手で器用にキャッチして、
「キノコマイスターのオオガキさん、これ毒キノコであってる?」
キャッチした手をオオガキの前に出す。
「わかってきたじゃないかケイゴクン、正解だ」
「よっしゃ」
ケイゴがガッツポーズを取る横で、オオガキが女二人に言及する。
「で、お前らは何で抱き合ってるんだ?」
二人はお互いの身体を離した後、待ってましたとばかりに顔をあげて言った。
「お、お化けが出たの」
聞いたオオガキは真顔になって、
「さて、腹も減ったしさっさとティルコネイルに行こうか」
荷馬車に向かって歩き出そうとするが、ウェリアムの声に引きとめられる。
「ほ、本当だって!周りに誰もいなかったはずなのに、ガサガサ聞こえたもん!」
横ではマリーが、うんうん、と頷いている。
「アッハッハッハ!お化けですってよオオガキさん!ウェリもまだまだ子供だなあ」
言ったケイゴに対して、またしてもきのこが飛んでくるがキャッチ。
オオガキは呆れ気味の顔で、
「あのなー、別に見たわけでもないし何か盗られたわけでもねーんだろ?だったら気のせいだよ気のせい」
言われたウェリアムが、むう、と顔を膨らませる横で、マリーが言った。
「お、黄金きのこが、なくなってたのよ」
聞いたオオガキとケイゴが、顔を見合わせる。
「その話なら俺たちの方も体験したよな、オオガキ」
「あ、ああ…。でも別に幽霊ってことはないだろ」
「まあ、そりゃないだろうが…」
二人は腑に落ちない顔になる。
その時、
ぐぅ~~。
という奇妙な音が鳴り響いて、マリーが飛び上がる。
「な、なに?なんの音っ?」
飛び上がったマリーに対して、ウェリアムは俯いて、
「ごめん、今のは私のお腹…」
「な、なーんだ。びっくりさせないでよね!」
一安心したと表情でわかるマリーが言う。
あー、まあとりあえず飯にしようか、という意見が誰からともなく出て、一旦幽霊のお話は閉幕。



そして再開。
四人は、ダンバートンからティルコネイルへの道中にある広場でテーブルに座り、昼食をとっていた。
本来は、近くの森で採った木材を加工する、木こりの作業場なので、後ろからはせわしなく作業音が聞こえてくる。
「だからさー、俺はエルフの仕業だと思うわけよ」
サラダを食べながら、ケイゴが言う。
「エルフには姿を消す技術があるって噂聞くもんねー、見たことないけど」
ウェリアムがパンを口に運びながら言い、それに対してオオガキが突っ込む。
「そら姿消してたら見たことあるわけないわな」
「でも、なんでわざわざ隠れて採っていったの?」
マリーはマヌスの冷蔵庫から材料を貰ったのか、持ってきた弁当を食べている。
「うーん、取り合いになったら面倒だからとか?」
ウェリアムの言葉にケイゴは頷いて、
「それもあるだろうけど、黄金きのこは高く売れるからなあ、あとあと奪いに来られないようにじゃないかな」
オオガキは、ふーん、と適当に流しながら、思い浮かんだ疑問を口にした。
「しかしそのエルフの能力ってのは、衣服まで消せるもんなのか?」
しかし誰もその答えを知る者はいないので、
「あー、全裸ならいいんじゃね」
ケイゴは憶測で口にするが、
「つまり兄さんは、エルフが全裸で森を歩いていると!」
ウェリアムに指摘され、更にオオガキには、
「マリーが引いてるぞ、どうすんだケイゴ」
「いや憶測だから!願望じゃないから!」
ケイゴが必死に否定するも、マリーは、
「とりあえず幽霊じゃないんだね、よかったー」
「え!スルー!?」
「マリーちゃんそのお弁当美味しそうだねー、ちょっとちょうだい!」
「フッ、マリーもケイゴの扱い方がわかってきたな」
「黙れオオガキ!」
騒がしい男衆を置いて、女二人は話を弁当を分け合う。
「うわ、このお弁当凄い美味しい、マリーちゃんがつくったの?」
「ううん、マヌスさんが持ってけって」
「うわお、あの筋肉ヒーラー料理もできんのかよ」
あまりヒーラーの世話にならないケイゴが驚く。
「栄養バランスとか考えた上で美味いもんつくるからスゲーよな、マヌス」
親しいオオガキは頷く。
ウェリアムは味わいながら、
「うん、これ売り出せるレベルだよ。弁当屋に転向すればいいのになー」
「アイツにヒーラーやめられたら俺が困る」
「オオガキお前怪我しまくりだもんなー」
「ああ、今度の冒険は鳥にでも攫われて戻ってくるかもしれねー…」
四人が思い思いの会話に華を咲かせていると、隣のテーブルに、1人の男が座った。身長は大きくも小さくもなく、髪は短めに切り揃えられた銀髪で、椅子の隣にはキノコを入れるためのカゴが置いてある。

はじめに気付いたのはケイゴだ。彼の位置からだと、丁度かごの中身が見えて、
「ぉぉぉ…?!」
小声で感嘆した。かごの中には黄金きのこがどっさり入っていたのだ。
「おい、オオガキ、アレ見ろアレ」
「なんだよ?」
言って指された方を見たオオガキは、
「おっ」
おもむろに立ち上がると、男の方へと歩き出し、ケイゴがなにをする気だコイツと心の中で思うのも無視して、男に話しかけた。
「よ、れまっち」
男はオオガキの方を見て、
「おや。やあ、がっきー」
れまっちと呼ばれた男、レマサは、笑顔で挨拶を返す。アダ名で呼び合っている事から、親しい人物なのだろう。
「こんなとこで何してたんだ?」
「いやぁ、毒キノコ集めにきたんだけどさ……」
チラ、とレマサがかごの方を見たので、オオガキも釣られて視線を移す。
「うわ、すげー量の黄金キノコだな…、なにコレ、どうした」
「毒キノコが全然なくて、黄金キノコばっかりだったんだよね」
ははは、と笑ながらレマサが言う。
「ああ、じゃあ俺達の前の黄金キノコがいきなり消えたのもれまっちの仕業か…流石は神出鬼没の異名を持つ男…、いや、キノコ狩りの男に変更しようか」
「そんな異名いらない…、がっきーはここに何しに?」
「まあ、色々あってな。そこの奴らとティルコネイル行く途中に、フラっと寄ってキノコ刈ってたんだ」
「ふーん。あ、毒キノコあったらコレと
交換してよ」
レマサは言って、かごから黄金キノコを取り出す。
「そう言われてもな…、俺は食用しか採ってないし、残念だが……」
言い終わる前に、声が来た。
「ある!あるあるアルヨ!毒キノコぉ!」
いつの間にか、先程キノコマイスターに認定されたケイゴが、ウェリアム達の集めたキノコのかごを漁っていた。
それを持って、オオガキとレマサの方へと近づいてくる。
二人の前でかごを置いて立ち止まると、一礼し、
「はじめまして!」
声高に言って、かごのなかの毒キノコを、どさっ、とぶちまけた。
「どうも、ケイゴと申します!毒キノコをご所望と聞いて参りました!」
「あ、どうも、はい」
レマサは面食らいながらも応える。
オオガキは、本当に毒キノコということを確認して、
「あの二人毒キノコしか採ってこなかったのか、逆にすげーな」
変なところに感心していた。
「えーっと、どうする?れまっち」
オオガキが一応聞くと、
「もちろん交換させてもらうよー」
「して、黄金キノコに換算するといくつ分に!?」
ケイゴは金が絡んだので、安定してテンション高めだ。
「うん、黄金キノコなんて使わないし、全部でいいよ」
「「まじで!?」」
男二人がハモる。
「れ、れまっち、無理しなくていい?だぜ?」
オオガキが断ろうとする中、ケイゴはオオガキにだけ見えるよう、手でバツ印を作ったりしていたが、
「いや、ほんといらないから、いいよ」
レマサの一言で小さくガッツポーズをとった。
「交渉成立ということで!」
ケイゴが右手を差し出したので、レマサも握手に応じる。
「しかし、毒キノコをそんな量どうすんだ?」
オオガキの質問に対してレマサは、
「さぁ、俺は頼まれただけだからさ。まあ、人に使うような依頼人じゃあないから安心しなさい」
「ふーん、まあいいけど」



その後、オオガキ、ケイゴ、レマサは三人で昼食を済ませて別れ、二人で談笑していたマリーとウェリアムを連れて、ティルコネイルへと出発した。

「というワケで勝負はお前らの負けだな」
荷台の後ろ部分、荷物の間に座りながら、オオガキが言う。
「えー、でも黄金キノコになったんだし、私達の勝ちでも…」
ウェリアムが弁解するが、ケイゴに割って入られる。
「ありゃー俺の功績よ」
静観していたマリーは、
「そもそも、勝者には何かあるの?」
無論、何もない。本来はマリーを雰囲気に馴染ませるために始めたことだ。
「何にもない、だがしかし。勝負は白黒付けねーとな」
言ったオオガキは、別に負けず嫌いというワケではない。正々堂々と闘って完敗すれば負けを認めるし、死闘のすえに自分が勝っても負けても、相手に敬意を払う。
しかし、勝敗がはっきりしないのは駄目だ。なんとなく、そういう奴なのだ。
「うん、じゃあそっちの勝ちでいいよ」
「おお、マリーちゃん大人だな。オオガキも見習えよ」
「う、うるせー、勝ちは勝ちだ」
オオガキは言うと、寝転び空を見上げて静かになった。
その視界の端、近く丘にある樹の横に佇んでいたのは、
(黒い…重鎧…?)
全身を漆黒のフルプレートアーマーに包んだ、何人かの男の姿だった。

~~~~~~~~~~
驚異的遅筆

荷馬車が行く。
乗るのは二人。(と更に二人なのは秘密だ)
時刻は昼前、彼らはダンバートンを北上し、ティルコネイルへ向かっている。
そこで起きることを彼らはまだ知らず。
故に、束の間の休息を手に入れる。


オオガキの大冒険 stage2


「へー、マリーはティルコネイル出身なのか。里帰りだな」
オオガキが言う。
「うん、村長のお家でお世話になってたんだー。しばらく帰ってないから心配してるかも…」
こたえるのはマリー、小柄な少女だ。
(思ったより面白い会話がないよ、兄さん)
(うむ、オオガキのヤツめ、女と二人きりなのになんて雰囲気のない)
そして荷物に紛れてコソコソ会話しているこの二人は、黒髪赤眼でオオガキの妹分の少女、ウェリアム。
そして、オオガキの知り合いでウェリアムからは兄さんと慕われている、銀髪ボサボサ髮の二十代半ばの男、ケイゴだ。

オオガキは思う、聞き出すタイミングが掴めねー、と。
というのは、少女にあった出来事のことだ。
傷だらけで、森の中に倒れていた少女、マリー。
それを助けたオオガキは、何があったのかを知っておくべきだ。
モンスターにやられて倒れていたのならともかく、彼女の傷は恐らく、人間につけられたものなのだから。

オオガキは、避けられる話題だと承知で質問する。
「なあ、マリー。なんで、あんな森の中にいたんだ?」
倒れていた理由には、あえて触れない。
「わかんないんだ、それが。全然別の場所にいたはずなのに、気付いたらあの森で倒れてたみたい」
オオガキは、ほお?、と顔を傾けて、
「それまでは何処にいたんだ?」
核心に触れようとするが、
「ごめん、それは言えない」
やはり、断固として突き放される。
「ふーん。ところでその弓、使えるのか?」
オオガキは興味のない風を装って、話題を変更する。
「あ、これ?使えるよー、あんまり…強くはないけど…」
「へえ、どれ、あの丸太に当てられるか?」
「余裕余裕」
言ったマリーは狙いを引き絞り、
ビュッ、という音で射出された矢は、丸太の年輪の中央に突き立った。
「うお、なかなかやるなあ!」
オオガキは、マリー予想外の腕に驚くが、マリーはあまり得意気な表情ではない。
「全然ダメだよ、こんなんじゃ…」
何も守れない。マリーは、そう心の中で呟いた。
マリーの表情の陰りに気付いたオオガキは、提案した。
「ちょっと寄り道しないか」
「あたしはいいけど、どこに?」
マリーが訝し気に答える。
「通り道の森で、きのこ狩り対決といこうぜ、村長さんへの土産にもなる」
「えっと…あの…」
マリーからしてみれば、いくら命を助けられたとはいえ、男と二人で森の中に入るのは不安があるのだろう。
それを察していたオオガキは、
「大丈夫、後ろの荷台に潜入したアホ共も一緒だから」
ガタガタッ、と、荷物の動く音がした。



「よーし、じゃあ30分後にここで落ち合おう」
オオガキ達は、ティルコネイルへ向かう道中の森へ来ていた。荷物は、近くの広場の信頼できる木こりに預けてある。
「よーし、絶対勝つよ、マリーちゃん!」
言ったのはウェリアムだ。
「うん!」
マリーも元気に返事をして、二人は駆け出して行った。
「流石ウェリ、仲良くなるのが早い早い」
残されたケイゴが、横のオオガキに言う。
「ま、それを見越してお前らが乗ったのスルーしてたんだけどな」
「え、そうなの」
オオガキの一言にケイゴがちょっと驚き、余計な一言を言う。
「なんでそんな気が利くのに彼女いないんだ、お前」
「うるせーよ、俺達もいくぞ」
言って、二人も森の中へと歩き出す。

「しかしきのこ狩り勝負とは。また珍しいこと考えつくもんだなー」
感心するケイゴに対してオオガキは、
「チーム別に別れて勝負すると、チームメイトと仲良くなるだろ?同性なら特に」
キノコを狩り取りながら応える。
「土産にもなるし、いい案だ。流石俺の弟分だな」
「誰が弟分だ……あ、ケイゴそれ毒キノコだぞ、持ってったら減点だ」
「うげ、まじかよ危ねえ」
ケイゴが持っていたキノコを慌てて捨てて、冗談混じりに言う。
「しっかし伊達に冒険してねーな、よく見分けられるもんだ。キノコ鑑定士の称号をやろう」
「いるか、そんなもん」
オオガキは突っぱねる。
ケイゴは別の話題を思い出した様に、
「そういや、今回はどこまでいけたんだ?お前の大冒険」
「冒険ってほどのことはしてねーんだけどなー。今回もエルフの村には到達できなかった」
聞いたケイゴは笑って、
「今回は死にかけの女の子を拾ったからかー、前回は砂漠で砂嵐に巻き込まれて逃げ帰ってきたっけ」
オオガキは思い出すのも嫌そうな表情で話を続ける。
「ああ…その前は橋が崩れて川に落ちた…」
「ははは、お前呪われてるんじゃねーの!」
「う、うるせい。いつか絶対世界の果てまで見てやらあ」
「はは、まー今のうちに頑張れよ」
「ケイゴはエルフの村まで行ったことあるんだったか?やるなあ」
ケイゴはオオガキの賛辞に、平然とした顔で応える。
「エルフの村はなー、暑いけどいいとこなん…」
「わーまてまて言うな、俺が自分で行って確かめるんだよ」
オオガキに言葉を無理矢理遮られたケイゴは、それでも愉快そうに微笑んで、
(お前の運さえ悪くなけりゃ、とっくに行けてる場所だけどな…)
心の中で、密かに呟いた。



マリーとウェリアムは、森の中の切り株に座って、かごに入ったきのこを眺めていた。
「結構取れたねー」
ウェリアムが言う。
「でもまだ時間あるし、もう一回りしよー」
「あはは、マリーちゃん流石若いね!元気だね!」
「なにオバサンみたいなこと言ってるのよ、ほらいくよー、ウェリ!」
「私はもうオバサンでございますよ、よっこいせ」
ウェリアムがわざとらしく年寄りの様に立ち上がるので、マリーは笑ってしまう。
「あはは、……あれ?」
前を見て歩き出そうとしたマリーが、何かを見つける。
「なんか見つけたの?マリーちゃん」
数歩遅れて歩いてきたウェリアムの問いに、マリーは振り向いて、興奮気味に応える。
「お、黄金きのこだよっ、おーごんきのこ!」
聞いたウェリアムもテンションをあげて、
「な、なんだってっ!あの超高級食品の黄金きのこ!?どこどこっ」
「あそこっ!」
マリーが、きのこの見えた位置を指差すか、
「あれ?」
黄金きのこが、ない。
「あれー?」
周りも見回してみるが、やはりない。
「気のせいだったんじゃない?」
後ろのウェリアムが、一緒に辺りを見ながら言う。
「うーん、そうだったのかな…」
マリーが納得しかねながらも言ったとき、少し離れた木陰から、ガサガサと音がした。
マリーはビクッとして、
「な、なにかいる…?」
「く、熊とかはいないから大丈夫なはずだけど…」
大丈夫と自分で言ったウェリアムも、一歩引いている。
「そ、そういえばこの森、夜には幽霊が出るとか出ないとか聞いたような…」
「ええっ…!?ま、まだお昼だから大丈夫だよね、ね、マリーちゃん!」
話ながらも二人は何歩か下がって、
「「と、とりあえず逃げよう!」」
知り合ったばかりとは思えない意見の一致で、森の外へとかけだした。

~~~~~~~~~~
ついにほのぼのファンタジーライフになった気がする!
「ーーーーー!」
トロールが何か、聞き取れない言葉を叫びながら、曲がり角から走り出てくる。
出てきた先の通路にいるのは、ウェリアム一人。
そのウェリアムが、
「こっちに、きなさいっ」
言いながら、トロールへと石を投げつけ、横の通路に飛び込んで走り出す。

走って走って、出た空間は、ウェリアムが囚われていた、牢屋のある場所。
そしてそのまま、ウェリアムは牢の中へと飛び込む。
そして追って来たトロールに対して、
「ヘイヘイ、こっちよこっち!」
叫んだ。が、
トロールは構えを崩さず立ち止まる。
牢屋内に入れば、鍵を閉められる危険性を感じているのだろう。モンスターといえど、そこまで馬鹿ではないということか。

牢屋の前で、中を威嚇しつつ構えているトロールに対し、モンスターとの知恵比べで負けたウェリアムは、
「ど、どどどどうしよ…」
混乱しまくっていた。

すると、トロールの更に後ろ、そろりそろりと、近づいて来たオオガキが、ジェスチャーで何か伝えようとしているのにウェリアムが気づく。
オオガキはまず地面を指差し、一度手を握り、空中に向かって手を開いて何かを放つ動作をーー、
「なるほど…!」
ウェリアムは理解し、行動する。
地面に転がる小石を数個握り、トロールの顔面目掛けて叩きつけるーーッ!
そして一瞬、トロールに小石が当たったその時、
「うおおおりゃあああああ」
オオガキが飛び蹴りを食らわせる。
蹴られた勢いで、トロールが牢屋の中へと吹き飛ばされる。
オオガキは急いで扉を閉めようとするが、
「■■■■■■■!」
起き上がったトロールは怒りの声の滲んだ叫び声を上げ、オオガキへと飛びかかろうとする、しかし、
「やらせないっ」
横からタックルを仕掛けたウェリアムによって阻まれ、
ガチリ、と、牢屋の鍵が閉められた。
「ウェリ!」
オオガキが、牢屋の内側にいるウェリアムに手を伸ばし、
「兄貴!」
その手をとって、鉄格子の隙間から引きずり出した。



オオガキとウェリアムは、洞窟を出口へ向かって歩いていた。
歩き出してしばらくは、トロールが鉄格子を破壊しようとする音が聞こえて内心ビビったものだが、いまはそれもない。
「兄貴、よく見たらボロボロだよね、背中から血出てるし…」
「あぁ…まあな…」
「右手動いてないけど、大丈夫なの?」
「ただの麻痺毒だよ、大丈夫大丈夫」
言いながらも、オオガキの表情はかなり疲れていた。



洞窟を出ると、景色はもう夜だった。見えるのは辺り一面の茶色い岩肌と、土。
「バンホールの近く、か?」
言ったオオガキの身体が、ぐらりと倒れかける。
「あ、兄貴、ほんと大丈夫?」
毒と出血のせいか?と思いつつオオガキは、ごまかすのをやめて答える。
「悪い、実は街まで歩けそうにない。行って誰が呼んで来てくれるか?」
夜道を一人で歩かせるのは心もとないが、無理について行っても、今は足でまといにしかならない。
それを聞いたウェリアムは、ポケットから何かを取り出し、
「じゃじゃーん。蜜蝋の羽!」
オオガキは一瞬、おお、と感心して、
「もっと早く出せよ…」
言って、安堵のせいか、気を失った。
「どうせ洞窟の中じゃ使えないでしょー。あれ、兄貴?」
オオガキが気絶しているのに気付いたウェリアムは慌てて、転移呪文を唱える。
「アカンパニ〈同行移動〉、えっと、ダンバートン!」



翌日。ダンバートン、ヒーラーの家二階のベッドで、オオガキは目覚めた。
「よ、起きたか」
オオガキが起き上がると、近くのイスでりんごを丸かじりしていた男が話しかけてきた。
身長はオオガキより高く、微妙な長さの銀髪はボサボサでまとめられていない。年は二十代半ばで、わずかに伸びたあご髭は処理されていないのか、ファッションなのかわからない。
寝起きの朦朧とする意識の中で目を凝らすと、
「おお、ケイゴじゃん」
男はオオガキの、昔からの知り合いだった。
近所の兄貴的なものだ。ウェリアムとも知り合いで、ウェリアムからは兄さんと呼ばれている。兄の多い奴だ。
「お前が珍しく怪我して戻ってきたって聞いてな」
「なるほどな、でも見世物じゃねーぜ。あとその食ってるリンゴは俺の見舞いに買ったんじゃねーのかよ」
ケイゴはリンゴを食べながら頷く。
「うん。お前への見舞いだぜ?ウェリからの」
オオガキが呆れた顔で、
「自分で買ったもんですらないんかい」
と言うが、ケイゴは全く悪びれる様子はない。
まあまあいいじゃないの、と手振りで表して、懐から一枚の手紙を取り出す。
「お前宛だってよ」
オオガキは受け取り、
「なんでケイゴが俺宛の手紙持ってんだ?プライバシーもなにもねえ」
「へっへっへ、最近は郵送のバイトしてんのよ。儲かりまっせー」
「へえ、なんでまた。狩りで儲けた方が効率いいだろ?」
聞いたケイゴは、ちっちっ、と指を振って、
「生涯狩りで生計たてるなんて無理だぜ、早いうちから色んなとこにコネつくっとかねーとな」
「ふーん、そんなもんか。二十代にもなると大変だなあ」
オオガキは他人事のように適当な返事をして、手紙を開封する。
「差出人は…イメンマハの…お偉いさんじゃねーか」
イメンマハは、領主によって統治されている、ダンバートンの西に位置する街だ。どうやら手紙は、そこの偉い人から届いたらしい。あの後、ウェリが通報して、オオガキの名を言ったのだろう。
「へえ、どんな内容なんだ?」
オオガキは一通り目を通した後、
「昨日、俺が盗賊とやりあってたのは知ってるか?」
ケイゴに質問した。
「ウェリから聞いてるよ。お前をそこまでボコした奴の顔が見てみたいもんだぜ。それで?」
オオガキは一瞬ムッとしたが言葉を続ける。
「そいつらのその後だよ。顔が見たけりゃイメンマハの牢獄に行って来い、会えるってよ」
「ふーん。お前なんでそんな不機嫌そうなの?」
オオガキは、はぁー、と長い溜息の後、
「そのクソ野郎が生きてるのにイラついただけさ。自分の毒ナイフで死んだはずだってのによ。ギリギリで捕らえられたか」
ケイゴは冗談混じりの口調で、手をひらひらさせながら言った。
「おー物騒だねえ、怖い怖い」
聞きながら手紙をしまおうとしたオオガキは、もう一枚紙が入ってることに気付く。
内容は、
「パラディン修練所のお誘い、ねえ」
読んだオオガキが呟く。
それを聞いたケイゴは、
「パラディン修練所ってアレか、伝説の光の騎士を目指す人材をうんたらっつー」
「要するに滅茶苦茶厳しい訓練所だろ、こんなとこ誰が入るかっつーの」
聞いたケイゴは笑いながら、
「そうそう、お前は気ままな冒険者がお似合いだぜー」
言って、ケイゴは立ち上がる。
「じゃ、俺はそろそろ次のバイト行くわ。お前明日もここにいんのか?」
「さあ…マヌスが出してくれるならいないけど」
「じゃあ無理だな、あのおっさん過保護だから。ま、明日も来てやるよ」
背中越しに手を降りながら、ケイゴは階段を降りて行った。


オオガキが数分ぼーっとしていると、階段を上がってくる足音が聞こえた。
「随分と顔色がよくなったな、オオガキよ」
上がってきたのはマヌスだ。
「ああ、おかげさまで。どうも」
「しかし今回の毒は本当に危なかったぞ?捕えられた賊の懐から解毒薬が見つからなかったら死んでたところだ」
オオガキが、え?、という表情になる。
「え、あれ?俺はそいつに解毒薬のありかを聞き出して飲んだはずなんだが…」
マヌスは一瞬何かを考えるよう口に手を当てたが、すぐに思い当たったのか、
「なるほどな…。オオガキよ、おそらくそれは、遅効性の眠り薬だな」
「げえ…マジかよ…」
「なにやら狡猾な奴と一戦交えたらしいな。まあ、俺の治療もあって今はなんともないだろう。ここに運んできたウェリアム君にも感謝しておけよ」
「おう…本当にな…」
あの場にウェリアムがいなければ、トロールをなんとか倒したとしても眠りに落ちて、そのまま毒で死んでいただろう。
ダレンとかいったか、なんて狡猾な奴だ…。
オオガキが思い返していると、マヌスが話だした。
「とりあえず、捕まった奴のことはどうでもいいんだ、それより頼みがあってな」
「うん?なんだよ?」
あのマヌスが、病人に頼みとは珍しい。
マヌスは、
「病人にそう難しいことはさせん、安心しろ」
と、前置きして、
「ティルコネイルまで、医療品を届けて貰いたい」
そう言った。
「そんなの、俺じゃなくてもいいんじゃないのか?」
「いやな、ついでと言うのもなんだが、一人連れて行ってほしい子がいてな。おーい、入ってきてくれ」
「子?」
と、オオガキが呟いたと同時、小さな影が入ってくる。
「えと、初めまして、ですよね。一応」
14歳程度の少女を見て、オオガキは、
「はじめましてー…あれ?俺がおととい連れて来た子?」
「そ、その節はありがとうございましたっ!」
頭を下げる少女の横でマヌスが言う。
「昨日の夜に目覚めてな。伝えに行こうと思えば、今度はお前が倒れてきた。明日は誰が担ぎ込まれるんだかな」
「ヒーラーが縁起悪いこと言うなよ。あー、あと君、えっと」
「あ、マリーです!」
「おう、マリーちゃん。助けたのは偶然だから気にすんなー」
オオガキが微笑みながら言うと、マリーの緊張が少しやわらいだようだ。
「それで、この子とティルコネイルまで行って、荷物を届けてくりゃいいんだっけ?」
「そういうことだ。まだ調子が悪いなら明日でも構わんが……」
マヌスが言い終わる前に、オオガキが遮る。
「いや、今日行く。一日中寝てるなんて耐えらんねーし」
「フ、お前ならそう言うと思ったさ。荷物の準備はしてある。まあ、とりあえず飯は食っていけ。マリー君、一階からとってきて貰えるか?」
言われたマリーが返事をしようとするが、オオガキが先に口を開いた。
「いいよ、自分でいくって」
だが、
「待て、お前と少し話があるんだよ、馬鹿。マリー君、頼む」
今度こそ言われたマリーは返事をして、階段を降りて行った。

マリーの足音が消えてから、オオガキがマヌスへ問う。
「あんな子に飯運ばせてまで話すことってのは、そんな重要なことなんだろうな?」
「あの子、マリー君に関わることだ」
マヌスがそう言うと、オオガキも少し真剣な顔になる。
「彼女が起きてから何度か、怪我をどこで負ったのか、何があったのかを聞いてみたが、」
マヌスは一呼吸置いて、
「彼女は、答えられない、と言った。わかるか?覚えてない、でも、言いたくない、でもない。答えられないと言った」
オオガキも、マヌスの言わんとしていることを悟る。
「言って、それを俺たちが知ったら、何かヤバイもんに巻き込まれるとか、そういうことか」
「だろうな」
マヌスが頷く。
「無理にとは言わんが、できれば同行中に聞き出してくれ。あれほどのダメージを与えられる敵など、そこらのモンスターではないはずだからな」
「オーケー、了解。さっさと飯食って出発するとすっかな」
「ウェリアム君には言わずに行くのか?今回は助けて貰ったんだ、それはどうかと思うが」
「そうだな、出るまでには一声かけていくよ。さっき見舞いにきた知り合いにもな」
言って、オオガキはベッドから出て、準備運動なのか、体を動かし始めた。


昼食を食べ終えた後、マリーに断ってからウェリアムとケイゴに挨拶をしに行き、女の子と二人旅ですかーうひょーと、見事二人に同じ冷やかし方をされて、マヌス宅の前の荷物置き場に戻ってくる。
マヌスの自費なのか経費なのかわからないが、荷物を運ぶのは荷馬車だ。ありがたい。
オオガキは装備を整えるとヒーラーの家のドアから顔を覗かせて、
「おーいマリーちゃん、いくぜー」
中から出てきたマリーは、
「ちゃん付けはなんか変な感じなんで、呼び捨てでお願いしますよー」
「了解。そっちも呼び捨てで、敬語もやめていいぜ?」
「わかりまし…わ、わかった!」
「うん、それでよし。じゃあいこうか」
二人揃って家を出て、荷馬車に乗り込む。
「出発進行!」
楽しげに言ったマリー、そして横にいるオオガキは、まだ知らなかった。
荷台に二人の侵入者がいることに……。



「しめしめ、忍び込んだのバレてないよ、兄さん」
「くっくっく、こんな面白い話聞いて、俺たちが首突っ込まないわけないのにな。なぁウェリよ」

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どこでstage1を終わらせればいいんだ…!
マリオよろしく8で区切るか…!