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マビノギっぽい小説置き場

マビノギ的な内容の小説を書いてるかもよ。
マビノギ知らない人も楽しめるように書きたいのかもよ。

「これか」
ダレンに背を向け歩き出して数分後、草葉の陰に隠された小瓶を発見したオオガキは、すぐさま開けて飲み下した。
「まっじぃ」
小瓶に入った液体の色がピンクだったので、なんとなく甘い印象で飲んだせいか、その苦味の強さにびっくりする。

さて、と。
「どこから探したもんかな」
目の前には、曲がりくねって先が見通せない道に、三叉路、所によっては十字路の分岐点がいくつもある。
「骨が折れるなあ」
そう言いつつも内心では、ウェリアムを探すついでに、お宝でも見つかれば頂いてやろう、なんて不埒なことを思ってたりする。
そんなことを考えながら、オオガキから見て最初の十字路に差し掛かった時。

『ピューーー』と、掠れた笛の音が洞窟内に響いた。
音はオオガキの歩いて来た方角から、つまり、
「あのクソ野郎、まだ何か隠してんのか……?」
それとも最後の悪あがきに、こちらをビビらせようとしているだけなのか。
そうだとしたら、オオガキは警戒心を煽られて立ち止まったのだし、その悪あがきは成功したと言っていいだろう。
どちらにしても、戦闘中にウェリアムを人質として利用しなかったことから、仲間がもういないことは割れている。
笛の音で動作する仕掛けなんてものも聞いたことがない。
何の意味もない無意味な行動、と、オオガキは笛の音のことをそう結論づけて、再び歩き出そうとする。

しかし今度は、笛の音とは反対方向から聞こえてくる、ズン、ズン、という響きを耳が捉え、またしても足を止める。
足音は、おそらく一人のもの。
何故さっきの戦闘中に出てこなかったのかはわからないが、仲間がいたと、そういうことだろう。
音の響きからして、かなりの巨体。
右腕の麻痺は解毒薬の効能に含まれないのか、未だ取れておらず、闘いには不利だ。
「さっきの野郎みてーに慢心してくれりゃいいけどな…」
そして構える中、通路の向こうから出てきた影は、
「う
おおおお!?なんでトロール!?」緑がかった身体の巨体、巨人族モンスターの、トロールだった。
片手で大型モンスターの相手は分が悪い、そう判断したオオガキは、洞窟の奥、ダレンのいる方へ向かって地を蹴った。
とりあえず、関係者であろうダレンをシメた方が早い。という判断だ。
後ろからはトロールが追ってきているが、奴に気付かれる前に駆け出したので、足を止めても、追いつかれるまで数十秒はあるはずだ。

ひたすら駆け、開けた空間で横たわるダレンの腹に飛び乗り、
「オイ起きろおおおお!アイツはなんだ!!」往復ビンタの連撃をかます。
ダレンは一瞬呻いた後、
「うるせえぞ、死人を起こすな」
言って、また目を閉じる。
「おい!」
オオガキが叫んで、今度は頭突きを叩き込む。
「ぐえ!」
流石にこれは聞いたようだ。ならもう一発、
と構えるオオガキを見て、ダレンが口を開いた。
「最初に…名乗っただろうが…。俺は、『カリスマテイマー』のダレンだ……モンスターくらい仲間にできるさ……」
「ちっ、完全に失念してたぜ!おいこの野郎、アイツ止めなきゃぶっ殺すぞ!」
ダレンは自嘲気味に笑い、
「誰がとめてやるかよ…!どうせ俺は毒で死ぬ、お前も叩き潰されて死にやがれ!」
言い争っていると、トロールが空間の入口に到着する。
「どうあっても止める気はねーか…」
「フン、死を覚悟した奴が一番恐ろしいんだよ、馬鹿が」
「……なら仕方ない、昔とあるジジイに教わった奥義を使うぜ……!!」
ダレンは、せいぜい足掻いてみろ、と言って、再び気を失った。
トロールが、棍棒を構えて向かってくる。
「奥義……」
対するオオガキは身体を反転させて、
「逃げるッ!」
洞窟の奥、行き止まり方面へ猛ダッシュした。

猛ダッシュの末オオガキは、一番狭い道に飛び込む。
トロールも追って小道へと入るが、
「ここなら上手く暴れられねーだろっ」
オオガキの狙いはこれだ。
トロールの長い腕、そして巨大な棍棒は、狭い道では振り回せないはず。
だが、その思考は次の瞬間否定された。
「ーーーーーーー!!」
叫びとともに、トロールが周りの岩盤にぶつかるのにも構わず、棍棒を振り回し始めたのだ。
棍棒の衝撃を受けた部分が、ボロボロと崩れていく。
「ばっかやろう!崩れる崩れる!」
このまま暴れ続けられたら、こんな洞窟の小道、数十秒と持たずに崩落するだろう。あるいは、それが目的なのか。
更に、通路の横幅はトロールの射程圏内だ、引き返すには奴をどうにかしなければならない。
考えている暇はない、オオガキは生きるために行動を開始する。

まず、オオガキは左に飛んだ。
トロールの右手にある棍棒の直線上、ギリギリ射程範囲内へ。
それを見たトロールが、足を開き、身を乗り出して、オオガキへと棍棒を振り下ろす。
オオガキはそれを前方のトロールへ向かってダッシュし躱すも、
ズドン!
爆発の様な破壊音と共に飛んできた、砕かれた床の破片がいくつか背中を直撃する。
「あだだだだだ」
悲鳴をあげながらも速度を緩めず、トロールの開いた足の隙間をスライディングで潜り抜け、体制を立て直しまたしてもダッシュ。
「よく走る日だなーちくしょう」
言いながらオオガキは、洞窟の出口方面へ駆け出した。
といっても、出口への正確な道はわからないし、トロールを
倒す方法も思いついていないのだが。



ウェリアムは、まだ洞窟の中にいた。
いや、正確に言えば、一度出て戻ってきた。
「そろそろ兄貴がトロール倒してくれたよね、あとは迷わないように出口まで案内しよう!」
と、そういうわけだ。最も、ウェリアムが洞窟から出られたのは優れた直感のおかげだったのだが。
オオガキを探して洞窟内を歩いていると、走ってくる影が向こうに見えた。
「あ、お~い兄…貴!?」
確かにその影はオオガキだったが、更にその後ろには、トロールのオマケがついていた。
怒涛の猛ダッシュでウェリアムのところまで来たオオガキが、スピードを緩めることなくその手を取る。
「な、なんで倒してないのさ!?兄貴ならトロールくらい倒せるよね!?」
ウェリアムが叫ぶ。
「う、うるせー今作戦思案中なんだよ!」
言われたウェリアムは、オオガキの身体が傷だらけなのに気付き、一戦終えたばかりで、状態が悪いであろうことを悟る。
「どうする…どうすれば…」
オオガキが呟くのに対してウェリアムが、
「出口までの道ならわかるけど…」
と自信なさげに言う。
「いや、それだと外に人がいた場合危険だ、巻き込むわけにもいかない…」
ウェリアムの予想通りの返答だった。こうくるのがわかっていたから自信なさげに言ったのだ。
ウェリアムもオオガキと並んで走りながら、打開策を模索する。
「あ」
思いついた。
オオガキが声に反応して聞いてくる。
「なんか方法あったか!?」
「うん、次の曲がり角の先に……」
二人は早口で話しながら走る。
「でも、それだとウェリが危険だ」
話しを聞き終わったオオガキが言うが、ウェリアムは大丈夫、と。今度は自信満々に、無い胸を張る。
それを見たオオガキは、
「危なくなったら俺が飛び出す、無理するなよ!」
そう言って、作戦通り岩陰へと飛び込んだ。

続く!
~~~~~~~~~
こいつらはいつまでこの洞窟にいるんだろうか。
進行の遅いジャンプ漫画みたいでごめんね!
あと、今回から投稿前の見直しが面倒になってやめました。
誤字脱字あれば報告お願いします。
ヒュンッ!
「くッ……んなろォ!」
ダレンのナイフが、オオガキの額を掠める。
「オラオラさっきの威勢はどうしたあ!そこに転がってるてめえの剣でも拾って反撃してみろよ、つまんねえぞぉ?!」
ダレンは言いながらも攻撃の手を緩めず、着実にオオガキの体力を削り取っていく。
「できたら……やってんだよ…!!クソ!」
オオガキは振られたナイフの隙を縫っては足技で攻撃するが、麻痺した腕のせいで上手く踏ん張りがきかず、大したダメージを与えられない。
戦闘開始からどれほどの時間が経ったのか、彼らに知る術はないが、時間は既に5分以上も経過していた。
その間オオガキは、実に回避と足技だけで持ちこたえている。
「両腕使えねえくせにしぶとすぎんだよ、さっさと死にやがれ!」
またしても大きく振られたナイフが、オオガキの身体を掠める。
それを躱したオオガキは、
「使えるさ」
身体を捻りながら右肩を思い切り振り上げ、旋回式バックブローとも呼ばれる、渾身の裏拳を放つ。
ドッ、という肉と肉のぶつかる音と共に、ダレンの身体がよろめく。が、数歩下がって踏みとどまった。
「へっ、へ……今のはビビったぜ、だがそんな握ってもいない拳は効かねえ」
「ちっ……麻痺の効果さえきれれば…!」
オオガキの呟きを聞いたダレンが、ニヤリと笑った。
「ハッハァ、なるほど、いくらなんでも攻撃が甘すぎると思ったぜ。時間稼ぎか!」
言われたオオガキは、無言でダレンを睨む。睨まれたダレンはそのことすらも嬉しそうに受け止め、
「怖いねえ、怖い怖い。大抵の奴はここまできたら諦めちまうんだけどなあ。いいぜ、褒美に一つ教えてやるよ」
一呼吸置いて、
「その麻痺毒の効果、一日は消えねえぜ。絶対に、な」
聞いたオオガキはギョっとした後、ダレンに向かい突進する。
「ハッ、ヤケにでもなりやがったか!」
ダレンは横に躱し、オオガキを背中から蹴り飛ばす。
「ぐッ…」
倒されたオオガキは、追撃を受ける前に、両足の力だけで起き上がる。
そしてまた、ダレンへと突進。
「無駄なんだよォ!」
叫んだダレンの次の言葉は、
「うおっ!?」
悲鳴と驚愕の混じった声だった。
オオガキがダレンの前で急停止し、横へ逃れようとしたダレンに足払いを食らわせたのだ。
今度は足を掬われたダレンが、背中から倒れこむ。
そして、
「てめーには容赦しねえ」
倒れたダレンの腹を、全体重を乗せた脚で踏みつけた。

「かはっ」
と声を出したきり動かなくなったダレンを尻目に、オオガキは立ち上がって出口の方を見ながら、思考する。
まずはこの洞窟全体を周り、ウェリアムを捜索する。生きているかはわからないが。
ついでに縛れるものでも見つけて、盗賊どもを拘束しておこう、と考え、足を進めようとしたその時。

グサリ、という音が背中から聞こえた。

「ナメてくれやがって、油断したなあ、おい」
声は同じ高さから。ダレンは既に、起き上がっている……ッ!!
「たぬき寝入りかよ…!」
オオガキが、背中に刺さるナイフの痛みを堪えながら言う。
「いいやぁ?数秒は意識とんじまったぜ?マジで。そのおかげでお前は油断したみたいだけどなあ」
オオガキが振り向くと、背中からナイフが滑り落ち、血が流れだす。
そして数メートル先、ナイフを投げたようなポーズのダレンが立っている。
「今度は麻痺毒なんかじゃねえ、モンスターから生成されたマジの毒だ。ほっときゃあお前」
そこで区切って、ダレンは今日一番の邪悪な笑みを作り、
「死んじまうぜぇ、くっくっく」
堪えきれないとでもいうように、最後は声も抑えず笑い出した。

黙って聞いていたオオガキは、
ユラリと。
背中から地面に崩れ落ちた。

落ちていた毒ナイフに左手があたり、小指が少し切れる。
カツ、カツと聞こえてくるのは、ダレンの足音。
そしてオオガキを覗き込むように、足を広げて目の前でしゃがんだダレンが、勝ち誇った顔で言う。
「残念だったなあ、俺の勝ちだ。冥土の土産に一つだけ教えてやるよ、お前のツレの女は生きてるぜ」
もっとも、とダレンは付けたし、
「お前はこれから殺されるんだ、会うことはねえだろうがなあ。おら、辞世の句」
へ、とオオガキは笑いを漏らす。
ウェリアムの生存を喜ぶ笑いと、そして、

己の勝利を確信する笑いを。

「俺も、お前に一つ教えてやる」
オオガキが言う。
「てめーの敗因は、」
「敗因!敗因だと?今更見栄はってねえでおとなしく遺言でも残してりゃいいんだよ!」
ダレンの野次も無視して、オオガキは続けた。
「自らの毒の能力を、把握してなかったことだッ!」
言い終わる前から、オオガキの左手が閃く。その手の中には、さっき背中から滑り落ちた毒のナイフ。
「なッ!」
ダレンが気付くが、もう遅い。
オオガキの左手で煌めいた毒ナイフは、ダレンの腹へと、深く突き刺さった。

「馬鹿な…麻痺がとれるわけはない……!」
呻きながらもダレンが言う。
オオガキは聞きながら立ち上がり、そこらに転がっている、自分の二本の剣を拾い上げながら答える。
「馬鹿が、てめーが切ったのは右腕だぜ?そして俺は、右肩を動かしててめーに裏拳をぶち込んでる。なんで右肩が麻痺してねーのに、左腕が麻痺してるなんて思ったんだ?」
ダレンはハッとした表情になって、
「左腕が使えないフリをしてやがったのか……!だが、何故だ…!」
「いいだろう、教えてやる。まず一つは、お前を調子に乗らせてウェリアムの…ツレの無事を確認するためだ。お前は調子に乗るとベラベラ喋ってくれそうだったからな、そのためには左腕は使えねー。強すぎてな」
「くく……まんまと作戦にハメられたってワケか」
「そしてもう一つ。お前を絶望させる方法を考えてたんだよ。お誂え向きの武器をありがとう」
聞いたダレンは自嘲気味に笑い、
「だがこの毒はお前も食らってる、解毒剤の在り方を知ってるのは俺だけだ、さあ、どうす……」
言い終わる前に、オオガキの右手の剣が、ダレンの右足を貫く。
「さっさと言った方がいい、お前には容赦しねえ」
「ぐおッ……痛え…わ、わかった言うさ……ここから真っ直ぐ行った突き当たりの角の草陰の隠してある…」
「どうも。じゃあな、閻魔様に会ったらよろしく言っといてくれ」
それだけ言って、オオガキは歩き出す。
後ろでは、足を斬られて歩けないダレンが必死に言う。
「ま、待て!俺の分もとって来てくれ!俺が死んだらお前のツレも殺す手筈だッ!」
オオガキは振り向きもせずに言い放つ。
「それができるなら最初からやってるよ、お前みたいな卑怯な奴は。もう諦めろ」
それきり、オオガキが振り向くことは無かった。



ウェリアムは、硬い岩の上で目覚めた。
眠る前の記憶はハッキリと覚えている。おそらくあの後、何らかの目的でここまで運ばれたのだろう。
辺りを見回すと、鉄格子の牢屋の中に入れられている。
だが、
「これ……格子の隙間大きすぎて出られちゃうんですけど」
ウェリアムの身体は、するりと牢屋から抜け出れてしまった。
しかも抜け出た先には、見張りの一人もいない。
振り向いて牢屋を改めて見ると、随分な大きさだ。モンスターでも入れていたかのよう。しかも、鍵はあいている。
「ま、まさかその辺にいたりしないよね~…」
確認してみるが、そんな巨体がいれば、すぐにわかるだろう。
とりあえずモンスターのいないことに一安心して、ウェリアムは廊下に出た。

廊下には数本の分かれ道があり、その一つから何かを食べるような音が聞こえてきた。
恐る恐る覗き込んでみると、そこには……。

緑がかった身体をした、2mを超える巨体。その脇に置かれる棍棒もまた巨大。
巨人族モンスター、トロールがそこにいた。

ウェリアムは、音を立てずに近くの岩陰へ飛び込む。
「ななな、なんでこんなところにトロールなんて……」
呟いた時、洞窟の奥から笛のような音色が響き、ウェリアムはビクッとする。
その音はトロールにも届いたのか、その巨体は食事をやめ、棍棒を手に取り立ち上がると、こっちに、部屋の出口に向かって歩いてくる。
バレた…!?と思い、ウェリアムは身構えるが、
ズン、ズン、という足音は、ウェリアムのいる岩陰と反対方向へ歩いて行った。
「はぁぁぁ~、死ぬかと思った」
トロールが角を曲がって見えなくなった頃、ようやく緊張が解ける。と、また洞窟の奥から何かの音がする。
『うおおおお!?なんでトロール!?』
ウェリアムは、聞いたことのあるような、と一瞬思考し、
「兄貴!?」
思い当たった声の主の名前小さく叫んだ。


続く!
~~~~~~~~~~~
Wrrrryyyyyyy!!
そう簡単には終わらないぜ!
洞窟の中、ドーム状に開けた広間で、二人は相対した。
「よう。お仲間なら向こうで寝てるぜ、頭でも打ったんじゃねーの?」
オオガキが、来た道を指差しながら言う。
対する金髪の男は頭に疑問符を浮かべながら、
「なにいっ!お前にやられたんじゃあないのか!?ドジなやつめ……!」
今度はオオガキがキョトンとする。皮肉のつもりがなにやら相手が妙に正直な奴っぽい。
この男本当に盗賊なのだろうか。もしかして俺の勘違いだったりするんじゃないだろうか、とか思いつつ質問してみる。
「なあ、あんた、何者なんだ?」
男は一瞬考えるような表情をした後、思い出したように顔を上げ、
「そんなことも知らずに、いや、知らないからこそ、ここに侵入なんてしてしまったのか!よろしい!ならば名乗りをあげよう!」
オオガキは、侵入なんてしてねえよ、と思いつつ、ノリノリっぽい相手の言葉を黙して聞く。
「『幻想盗賊団』、団員の一人!人呼んで、カリスマテイマーのダレンだッ!」
人差し指を突き出した右腕を掲げて、膝を妙な角度に曲げながら、ビシィ!とキメポーズをとっている金髪男、いや、ダレンと言ったか。
「そうかい、んで、ダレンさんよ。一つ訂正がある。まず俺は侵入者じゃあない」
またしても相手の顔に疑問符が浮かぶが、言葉を続ける。
「俺はあんたらの運び入れた荷馬車で昼寝してただけだよ、争う気もないし、この場所から何も盗っちゃいない」
何も無かったしな、と心の中だけで付け足す。

オオガキには、どうもこの男が人を殺すような人間には思えなかった。完全なる勘、なんの確証もない。
こいつらは自分の生活の為に荷馬車を奪っただけで、人を殺すような外道ではないと。無論盗みを働いた時点で悪には変わりない。それでも、一線は踏み越えていないと、なんとなくそう思いたかった。
ウェリアムが死んだかもしれないことを、打ち消したいだけかもしれない。

「つまぁり、君はあの少女の知り合いということだな!」
ダレンがポーズを解いて言った。
「黒髪で赤い目の、ってんなら、確かに知り合いだ。どこにいる?」
知らないのならば、それでいい。見逃して何処かに行ったと言うならば、それで構わなかった。
しかしーー、
「悪いが拘束させて貰っている!人質としてな!」
発せられた言葉を聞いて、オオガキの目付きが変わる。完全なる、軽蔑の眼差しに。
「そうか……。何の交渉に使う気だ?金か?」
「違うな、間違っているぞ!囚われた仲間を、いや、君達に捕らえられた仲間を返してもらうためだ!」
「はあ?そんな奴記憶に……いや、まさか……昨日襲ってきて勝手にやられた奴か…?」
ダレンも流石に呆れた表情になって、
「そ……そうだ…」
「そうかい、わかった。オーケー。アンタら盗賊が交渉に行っても、鎮圧されるぜ?俺が交渉してそのお仲間を返してやる。だから、ウェリアムを……捕えた女の子を離してくれ」
「なにっ、本当か!?いや、そう簡単に信じるワケには……」
やはり簡単に信じてはくれないか、と思い、オオガキは苦肉の策に出る。
「俺がその仲間を連れてくるまで、彼女を、ここに預ける。連れてきたら交換しよう、どうだ?」
本当なら人質を代わりたいが、ウェリアムでは上手く交渉して囚われた賊を連れてくることは不可能だ。
「…よし!わかった!猶予は24時間だ、それ以内にここへ連れてきてくれるなら、彼女は開放しよう!」
アジトごと制圧するためのメンバーを集めさせないために時間制限をかけたのか、そこまで馬鹿ってわけではないんだな、とオオガキは思いつつ返す。
「了解了解。とりあえずここの出口まで案内してくれよ」
「おう、こっちだ、ついて来な!」
言って、ダレンが身を翻す。
オオガキは着いて行くため、小走りで近くに駆け寄り、二人並んで歩き出そうとした、その時。

「って、」
ダレンが何かを言いながら、右腕をオオガキ心臓目掛けて突き出してきた。その手には、小さなナイフ。
「帰すわきゃねェェェェだろォォォォ!」
「なッーーにぃ!?」

ズシャ、と、肉の裂ける音。

「ちッ、惜しかったか」
ナイフは、オオガキの心臓には刺さっていない。瞬時に攻撃に反応したオオガキが飛びすさったのだ。
切られたのは、回避の間に合わなかった右腕の二の腕部分。
「くっはっは、お前、盗賊を何だと思ってんだ?そんな交渉信じるわきゃねーだろぉ?もっと人は疑えよなぁ」
笑いながら、さっきとは別人の様になったダレンが言い、更に続ける。
「敵を騙すにはまず味方から、つってアホ親分演じてきたが、もうやめだわ。あんな使えねえ奴らだとは思わなかったぜ」
腕を抑えたオオガキは、その一言一言を静かに聞き入れながら、ジワジワと怒りを蓄積していく。
それに気づいているのかいないのか、ダレンはまだ言葉を続けた。
「ああ、そういやあお前がさっき言ってた女、生きてるといいなぁ、おい?」
ブチン、と。
オオガキの頭の中で、何かが切れる音がした。
「クソ野郎が……ッ」
声にならなかった怒りを浴びせるべく、両腰から下げている剣を、両手に引き抜きつつ突進する。
「さっきの一撃で仕留めなかったのは失敗だったなッ!!」
オオガキが叫んだ。
開いた数メートルの距離を疾走し、右腕を振り上げ、傷が開くのも構わずに渾身の力で振り下ろす。右腕直撃コース……!!

キィン!
だがその一撃は、ダレンの腕に握られたナイフによって弾かれた。更に、弾かれた剣はオオガキの腕からも吹き飛び、後方の床へと滑る。
「なんだと…そんなチンケなナイフで……!」
驚愕する声はオオガキ。
対するダレンは冷静に、いや、嬉々として答える。
「ケケケ、まぁーだ気づかないのか?その右手、握ってみろよ」
オオガキは言われた通りに右手に力を込めようとするが、
「動かない……麻痺毒か……!」
「正解でぇーっす」
ダレンは言いながらオオガキの腹を蹴り、弾き飛ばす。と、2メートルほと後退したオオガキの、左腕に握られた剣も地面へ落ちる。
「あれえー?左腕まで麻痺しちゃったかあ?毒が多かったかもなあ、運がないぜ、お前」
「うるせえ……」
「おやおや気合だけは十分だなあ。でもその手でどうやって闘うんだ?なあ、おい」
ニヤニヤしながら喋りつつ、ダレンはオオガキへと近づいて行く。
「ほら、来いよ、攻撃してみろよ、ケケ……げっ」
しかしそのセリフは、最後まで続かない。
笑うダレンの左頬に、上段蹴りが叩き込まれたのだ。
「小賢しい盗賊風情が、調子に乗るなよ」
オオガキの言葉を聞き取れたのかも曖昧なダレンが、宙に舞い、床に叩きつけられるまで約2秒。バランスを崩して倒れたオオガキが起き上がるには十分な時間だった。
倒れたダレンにトドメを刺すべく、オオガキは敵へ歩み寄ろうとするが、
「ククク…ケケケ」
倒れた男から発せられる不気味な笑い声には、足を止めざるを得なかった。
ダレンが、ゆらりと起き上がる。
「楽しいなあ、こうでなくちゃあ面白くないよなあ。獲物には、徹底的に足掻いてもらわねえとなあ」
あまりダメージのない様子のダレンに対し、両腕を、だらんと下げたオオガキだったが、気概だけでは負けまいと、声高に言った。
「クズが、死で償え」

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この作品はほのぼのファンタジーライフ、マビノギの小説です!はい!