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【④】
『ごめんね・・・』
彼自身、どうしたらよいのか、その答えはわかっていました。ただ、その道のりを歩くのはとても勇気がいるものです。
思えば、物心ついた時から彼は一人ぼっちでした。彼はその事を気にしているわけではありません。でも、悲しいことがあったり、悩みごとがあったりした時に相談する人や励ましてくれる人は一人もいませんでした。ですからそんな場合はいつも月に話しかけて気持ちを落ち着かせるようになりました。しかし、いつからそうするようになったのか、それは彼自身わかりませんでした。
『やっぱり・・・僕にはできないよ。僕はもう僕ですらないから・・・誰もわかってくれないよ。それに僕、失敗ばかりだからさ・・・』
彼の言葉は今にも消えてしまいそうなほどか弱く、寂しさに満ちていました。そして、その言葉を聞いた彼女はうつむき、もう彼の顔をみることもできなくなってしまいました。
本当は、『君なら大丈夫だよ』と背中を押して欲しかった・・・でも・・・。
静かな静かな時の流れのなか
ポトン・・・。
朝露に濡れた若葉が一粒の滴を溢したとき、雲のカーテンの隙間から太陽が目を冷まし、寝ぼけ眼の鳥たちに朝の郵便配達を頼みました。
コンコンと鳴る窓、その音で彼は目を覚ましました。薄暗く、灰色がかっている部屋を見渡してもあの子はどこにもいません。彼に優しく微笑み、寄り添い、そして悲しんだ姿は幻だったのだろうか。それならいっそ、この姿も幻であって欲しかった。
昨夜、暗闇の中で確かに感じたあの温もりを思い浮かべ、どうしても幻とは思えない彼はふと彼女の座っていた場所へと視線を落としました。するとそこには埃を被った何か丸いものが落ちているのが見えました。
それは壊れて針が止まってしまった丸いアンティークの懐中時計でした。彼は丁寧に埃を落とし、じっと眺めました。
(これ・・・、僕のかな?覚えてないや。けど、綺麗な色・・・ホッとする。へへ)
懐中時計を何気なく首にかけ、ぼーっと天井を眺めました。
『夢・・・そうだよね!・・・はぁ。』
静かな静かな時の流れのなか
確かに彼は
彼女の頬をつたう一粒の涙をみた。
【岡田直輝】
★ステージ挨拶
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