第165回「貧乏音大生の記録…借りものクラッシャー」 | 打楽器奏者・嶋崎雄斗のプレイヤー日記~折れない心と折れていくスティック~

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【これまでのあらすじ】

打楽器の技術を磨くべく音大に入学した嶋崎少年(当時10代)は、都内の家賃23000円(風呂なし4畳半)の家でネズミや腰痛との戦いを繰り広げていた。

頑張れ嶋崎少年!

負けるな嶋崎少年!

貧乏生活から抜け出せる、その日まで…!!(詳しくは過去の同シリーズをどうぞ。)













どこの音楽大学にも「借用楽器」というシステムがある。

例えばピッコロトランペット(高い音が出るラッパ)や、バスリコーダー(めっちゃ低音が出るめっちゃでかいリコーダー)、古楽楽器(簡単に言うと昔の楽器)などの楽器を「自分の持ってます!」という学生は少ないだろう。

オーケストラやアンサンブル、実技試験、または授業などで演奏する曲でそのようや特殊な楽器が必要になった時に、「その一回だけのために高価な楽器を購入」しなくても済むように様々な楽器を予め大学が保管しておき、必要に応じて生徒に貸し出すという措置。それが借用楽器システムである。ありがたや!





特に普段から借用楽器を利用することが多いのが打楽器の学生だ。「ティンパニの練習をしたいけど買わないとできない」では本末転倒だし、自分のスネアを持っていないマリンバ専攻の学生というのもちょくちょくいる。

よって打楽器の日頃の練習は、常に大学に用意していただいた借用楽器をレンタルして使用するという仕組みが当たり前となっているのである。ありがたや!










あれは確か大学2年生の頃だったか。いつも通り練習していると…

大学から借りているウッドブロックが割れた。

















いやぁぁぁぁぁ!!こんな簡単に割れるのぉぉぉぉぉぉ!!














そう!

ウッドブロックの打面は薄い木でできているため、スティックでがつがつ叩いていると割れてしまうのである!あたりめーだ!!!

この時はあんまりよくわかってなかったのねん…。



とは言え、やっちゃったもんは仕方ない。

楽器保管室に割れたウッドブロックを持参し頭を下げに行く。


保管室の先生「あ~、これは盛大にやったね!そりゃ練習してればいつかは壊れるものだけどさぁ、これはちょっと思い切り叩きすぎじゃない?ま、今回は良しとするけど、あんまり頻発すると弁償になっちゃうから気をつけてよ!」


ははぁ!!すみませんでした!!





というわけで、何とか事なきを得て、また練習に向かったのであった。

…はい、まだ話は終わらない。






反省したのとウッドブロックを割った時の感触がトラウマ過ぎて、あまりいろいろな楽器を使う曲を練習するのはしばらく控えようと決意。次にマリンバの練習部屋へ向かう。

マリンバは専門分野だから大丈夫!さあ練習するぞ!と意気込んだのも束の間。


マリンバの低音(確かミ)が割れていた。







おいおい誰だよ!

つーか割った人ちゃんと報告しとけよ!







仕方ないからまた保管室に行って報告するか…とも思うも、頭をよぎるあのお言葉。

「あんまり頻発すると弁償になっちゃうから気をつけてよ!」














「弁償になっちゃうから気をつけてよ!」
















「弁償!」















うおぉぉ!!このタイミングで行ったら絶対に俺が割ったと思われる!!

マリンバの低音だと1枚2~3万円…俺の家賃が!!

自分が割ったウッドブロックを弁償するならまだしも、人が割った鍵盤を弁償したくない!!(そりゃそーだ!)

そこで、賢い嶋崎くんは考えた。
























「見なかったことにしよう」
















…当然そんなわけにもいかず、とりあえず楽器保管室へ。

俺「俺が入った時には既に割れてたんす!マジです!くっそー許さんぞ割ったやつめ!!」

保管室の先生「ふ~ん…?(疑いの目)」


というわけで、再び何とか事なきを得て、また練習に向かったのであった。

はい、まだ終わらない!!






もう今日はマリンバも練習する気になれないし、ドラムでストレス発散して帰ろう!とドラムセットが置いてある部屋へ。

ええ、そうなんです。



フロアタムの皮が破けていた。










俺「おまわりさん!俺じゃないんです!本当にやってません信じてくださいお願いしますぅぅ!!」

保管室の先生「わかったわかった…」








そんなこんなで後日、保管室の先生が打楽器の学生たちを集めて「借用楽器は丁寧に使いましょう、練習して壊れるのは責めないので気づいたら報告しましょう」というお説教をいただいたのであった。

果たして俺の容疑が晴れたのかどうかはわからないが、この時心の底から思ったことがある。




















弁償させられなくて良かった…


つづく。