ヴァイオリンへの身体作り -446ページ目

発声練習で上手くなる、ヴァイオリン

あるヴァイオリニストが、講義をするのが苦手で話し方教室に通ったと話していました。

そのお教室では先生に『ヴァイオリンを弾くように話せばよい』とアドバイスされて、
その場で本当にヴァイオリンの弾き真似をしながら話したんですって!

彼女はヴァイオリンのときはいい身体だから、発声のときも その身体にすればいい。


このアドバイスは理に叶っています。まず、よいヴァイオリンの手の形は、重心が下がり呼吸が深くなり、身体は楽になるのです。
これは武術とも通じているようです。



さて、この話題は大変興味深くありませんか。
アマチュア奏者も同じこと。
そう、逆の発想で、まず発声練習してよい身体を感じてみればいいのです。

私のクラスでは『あいうえお』の発声をしながら身体をタッピングし、身体の内側からほぐしていきます。
そして次に、発声の力を借りて 径絡(エネルギーの通り道)を活性化させていきます。

ご自身で身体がよくわかるようになり、力を楽にコントロールできるようになっていきます。


よいボーイングの、ただ一つの秘訣

スカスカ~な音を出している方がレッスンにいらっしゃいました。
           弦の張力(上向きの圧力)に対して同等の圧力を、弓で与えてやらなければならない話から始めました。
 弦と弓が対等の力関係になったときに良い音がします。(これを“無重力”と呼んでいます)

           次に、弦は弓に摩擦で引っ張られて→戻る、の繰り返し。
つまり弦は縄跳びのような動きです。しかし、縄跳びよりも複雑で多種多様な回転をしています。
          
受講生には『あなたは弦と弓の関係が、釣り合っていない。弦の方が強さが勝っています。だから うまく弦が回転させられていなくて
その結果、核の太い音=良い音にならないのですよ。



などなど。物理的な面からまずお話をしました。

ここで『なるほど』と納得して いい音を出し始める生徒が多いのですが
今日の受講生は もう一段階ありました。
     
さて、興味深いのは受講生の質問
『でも、右手をしっかり弾こうとすると、力が入ってしまうのです』



…力?!




力が必要だなんて話は、ひとつもしていないのに。

しかし、この反応に『なるほど』とも思いました。
多くの人が行き詰まっている問題かもしれないと思いました。
『弓の圧力』=『全身で力をかける』→『全身の力み』
という構図になっているのでしょうね。

リラックスのため受講生と一緒に大笑いをし、弓の加減について2、3お話をすると、彼女は急に『あ、わかりました』と表情を明るくして、よいボーイングをし始めました。
私が教えたことは、右手の親指と人差し指の角度です。

実はこのヴァイオリンの右手、合気道の、ある『型』そっくり。
ある型とは何かと申しますと、相手に寝技をかけられたときの反撃に使います。

脚の力がとても強くなり、相手に寝技をかけられて身体を押さえ込まれたとしても、手はこの型にさえしておけば、相手を蹴り飛ばすことが可能です。


そうです、この『型』とヴァイオリンの弓をもつ右手は、原理的に同じ。

お話をヴァイオリンに戻しますが、よい右手の形は、これは 足腰の強く使える型であるということ。
ヴァイオリンは全身で弾いているという説明にも繋がりますね。
それがよいボーイング=よい音の秘訣です。

『脱力』『リラックス』とは言わないで

『Aを教えたかったらBと言え』

という言葉がありますね。
          
楽器を弾くとき、『あ、あたし、力んでいる』と自覚するときがありますね?  一生懸命『力を抜こう』と思っても、なかなかうまくいかないでしょう?それもそのはず。人間は、そんなに多くのポイントを意識できないのです。 矛盾しているようですが、『いかに脱力するか』ではなく『いかに力を入れるか』を考えるようにしてごらんなさい。動きの意識のポイントを絞るのです。
安心してください。人間は繰り返していれば、いかに効率よくその動きを行えるか 学習するようにできています(笑) 

動きの大切なポイントさえ押さえていれば、知らないうちに脱力して弾けるようになっています。

大切なのは『動きのポイント』を整理すること。
自分に『脱力せよ』と命令することではありません。