ヴァイオリンへの身体作り -444ページ目

賢く上手になろうよ

ヴァイオリン演奏を家にたとえれば、各種テクニックは材木・レンガ・蕨や粘土のような建築材料に相当するでしょう。


スケール(重音含む)・エチュードはそれらの材料を繋ぎ合わせて、ひとつの建物を建てる決まりのようなもの。


何よりもまず、材料がなくては始まりません。
立派なヴァイオリン演奏の家を建てようと思ったら、たくさんの材料を用意しなければなりません。




プロを目指す子供は、幼児期からなるべく多くの材料を確保しようとします。

音楽のスタイルによって奏法は異なりますから、用心深く土台を固めながら少しずつ建てていくのです。

そうして 三歳から始めたとして、小学校卒業くらいで、一生使えるテクニックを身につけます。




大人から始めたアマチュア奏者が、いきなりこれの真似をしようとして一遍にドサドサと大量の材料を仕入れるのは、無意味であり、また、不可能です。
では、どれくらいの材料を揃えたらいいのでしょうか。


(つづく)

元弓が辛い

元弓が辛い。
(元弓まで弓が使えない、元弓の返しがぎこちない、元弓が一定の弓幅にならない…etc.)


ある著名なヴァイオリンの先生が『右足を上げてピアノの椅子の上に置いて、その姿勢でヴァイオリンを弾かせると、生徒の元弓のボーイングが良くなった』
と仰っていました。


身体作りの体操は、実は特別なものではありません。このように自然に よい方法を見つけていらっしゃる方はたくさんいます。
私の講座のゴールは、みなさんが独自に体操を開発してくださることです。







さて、冒頭のお話に戻ります。
『右足をピアノの~』これは、とても自然な身体の使い方。
同じ側の肩と股関節は、連動しています。加えて、胸骨も連動しています。
ヴァイオリンを弾くときに元弓に近づいて来たら、右の胸骨を意識して引き上げて 右の股関節も引き上げると
身体全体を使った素晴らしいボーイングができます。
もちろんこれは、習得できるまでに少し訓練が必要です。
この感覚を掴みやすい体操は、例えばジャンプ。
ラジオ体操に出てくる、ああいうジャンプです。
これを、膝だけを意識するのではなく、胸骨で身体を引き上げて 足は自然についてくるような感覚で行います。



必ず足首、膝、肩甲骨、股関節の柔軟体操を行ってから、5~6回ジャンプしてみてください。

先弓が辛いという問題

先弓が辛い(音が痩せる・弓が跳ねる)という問題
『自然な腕の形』
は、幼い頃に教わった動きの中には、ないかもしれません。
例えば学校の整列で『前へ習え』というのがありました。立ち姿勢で両手を真っ直ぐ前方に伸ばし、このとき当然のように 両手の平は向かい合わせです。
さて、この姿勢は大変不自然な形。お腹も突き出てしまいますし、胸の辺りは詰まった感じがします。
もし このような身体使いの意識まま ヴァイオリンのボーイングを行えば、これでは先弓の音は痩せます。
弓が跳ねる、先弓で弓が手前に倒れてしまう、なども全て同じ原因です。
もう一度、今度は手の甲を向かい合わせにして、『前へ習え』をやってみてください。
どうでしょう。
腕が肩甲骨から動かせる感じがよくわかり、腕はよく伸びるのではないでしょうか?
腕をもっと前方に伸ばしても、腹筋はしっかりしていますね。
手の平合わせの『前へ習え』とは、すごく身体の感じが違うでしょう?
実は、この姿勢、人間の筋肉の付き方に沿っている動きなのです。
これが『自然』な動きということです。
あれ?
どうですか?これって、ヴァイオリンの先弓の姿勢に、すごく近くありませんか?
その通り!ヴァイオリンの先弓の姿勢がわかりにくい人は、ゆっくり、手の甲を内側にした『前へ習え』を何度かやってみましょう。
ご自身で身体を感じてみてください。
手の甲合わせの前へ習えは、腕だけでなく、腰、胸の辺りも楽だと思いますよ。