詩人 黒田誉喜  Blog from globe -2ページ目

想い出

「 想い出 」



僕は時々思い出す。

想い出を思い出す。



くそ忙しい日常のど真ん中


空を見上げ


立ち止まらないと見えない雲の流れに

気が付いた瞬間


記憶が、

淹れたてのカプチーノの湯気みたいに

大脳新皮質に立ち込める。




音が消えて

擦り切れた8mmフィルムみたいな映像が

目の前の景色と交錯する。




濁ったガンジス。

親指を咥えた褐色の少女。

歪んだ夜の眩しすぎたネオン。

立ち込めた煙を透かす裸電球。

あいつとバイクで走った環状七号線。

ゴルチェの甘い香り。

星座が見えないほどの星空。

雨に濡れた原生林。

腕の中で喘ぐ眼差し。

アンバサダーの排ガスの匂いと
鳴り止まないクラクション。




どこかで鳴ったクラクションが

想い出を掻き消し


僕はまた

くそ忙しい日常のど真ん中で

空を見上げる。


風が頬を撫でる。


世界は音を奏でる。



そして再び僕は
この世界を歩き始める。


想い出の種をひとつひとつ蒔きながら。




黒田誉喜

























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僕と世界と光と無

「 僕と世界と光と無 」




僕は日本人であり

地球人であり

宇宙人です。


そして

最小と最大は

イコールで結ばれています。


つまり


宇宙の果ては

ここにあるということに他ならず


すべては光でできている

ということです。


その相対性は
美しいバランスとともに


崩壊の結論と構築の脆弱性という矛盾を見事に成立させ

堕逆の深淵に落ち沈んでゆくのです。



饒舌な月明かり

沈黙する星々



すべては僕の眼の中にあります。



アカシックな地平線は

オーガニックな世界を体現し

すべてがベーシックであることを知らしめています。



現在過去未来は同時進行しながら変化し

宇宙に蔓延ります。



時間が飽和し

すべては、無に帰するのです。


そしてそれは


すべての始まりでもあります。



黒田誉喜
































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君の瞳に僕が映っている。

君がそこにいる。

僕はここにいる。


君から見ればここは そこだし

君から見ればそこは ここだろう。


上も下も右も左も

ここも、そこも、あっちもこっちもない

にっちもさっちもいかないこの世界で


どこにいこうとも

そこに君がいれば

それでいい。


そこでわらっていられたなら
それでいい。


君もここにくるかい?

僕もそこへゆくよ。


あっちもこっちもない
にっちもさっちもいかないこの世界で

君と手をつないで
歩いてゆけたなら
それでいい。


時計の針がゼロを描く。


ふたりで過ごせる残りの時間は
またほんのすこし減ってしまったけど

そのぶん

ふたりで重ねた時間がまたふえた。

それはとても素晴らしいことだよ。



僕の瞳に君が映る距離までおいで。





君がここにいる。

僕もここにいる。


ふたりで

ずっと


ここにいたい。



黒田誉喜























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星の友達

「 星の友達 」

彼の星には戦争も平和もなかった。

だから、
僕はそれを説明するのに
ずいぶんと骨が折れた。

奪い合うこと。

平和を希求する気持ち。

搾取する支配階層について。

彼の質問は、
いつも哲学的にさえ聞こえた。

武器ってなぁに?

平和ってなぁに?

殺すってどういうこと?

支配という言葉を説明するのに
もっとも苦労した。


彼の星には戦争も平和もなかった。


あるのは
家族と過ごす恙無い暮らしの中で、
子供たちの成長や、
自分の成長を楽しみ、
自分の生まれた意味を自分で決めて
全うすることだけだった。

比べるという概念さえなかった。

対象物は常に自分だった。

だから、

彼との会話で一番盛り上がったのは、
家族と一緒に出掛けた時に見た
木漏れ日が優しい丘の上に
寝転んだ時に見える
空の青さについてだった。

波の音色が心地よく、
波しぶきが七色に輝く
午後の出来事だった。


黒田誉喜














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文字世界

宇宙宇宙宇宙宇宙宇宙宇宙宇宙宇宙宇宙宇宙
宇宙宇宙彗星宇宙宇宙月宇宙星宇宙太陽宇宙
宇宙宇宙宇宙宇宙宇宙宇宙宇宙宇宙宇宙宇宙
宇宙宇宙宇宙人工衛星宇宙宇宙宇宙宇宙宇宙
空空空空空空空空空空空空空空空空空空空空
空空空空空空空空空空空虹虹虹空空空空空空
空空空空空空空空空虹虹空空空虹虹空空空空
空空空空空空空空虹空空空空空空空虹空空空
空雲山雲雲空空虹空空空空空核鳥空空虹空空
空山山山空空虹空空空空空空空空空空空虹空
山山山山山空虹木家核僕君核空空空空空虹空
大地大地大地大地大地浜辺波海海海海海船海
石石石石石石石石石石砂砂砂砂海海海核魚海
岩岩岩岩岩岩岩岩岩岩岩岩岩岩岩海海海海海
岩岩岩岩岩岩岩岩岩岩岩岩岩岩岩岩海海海海
岩岩岩岩岩岩岩岩岩岩岩岩岩岩岩岩岩海海海
岩岩岩岩岩岩岩岩岩岩岩岩岩岩岩岩岩岩海海
岩岩岩岩岩岩岩岩岩岩岩岩岩岩岩岩岩岩海底
地殻地殻地殻地殻地殻地殻地殻地殻地殻地殻
熔岩熔岩熔岩熔岩熔岩熔岩熔岩熔岩熔岩熔岩
核核核核核核核核核核核核核核核核核核核核

誉喜


「誉喜」

誉喜は僕のこの世に享けた名だ。

「誉」と「喜」のふた文字で構成されている。

各々の意味をとあるちょっと特殊な辞典で調べてみた。

その辞典は、字の成り立ちや、元々の意味を記したもので

その辞典によると

「誉」という字は、

「神が人に授けるもの。」とあった。

そして

「喜」は神の感情を現す文字、
とあった。

人が感じる「よろこび」には用いられず、
神様がお喜びになった時にのみ使われる文字らしい。

僕は、こう解釈した。


人は神楽において
芸能を行い
神に「喜び」を捧げる。

神が誉めるに値する行った人に対し「誉れ」を授ける。


くどいようだが

まとめると

「誉」は神が人に与えるもの。
「喜」は人が神に与えるもの。


誉喜という名は、
神と人が与え合う輪を現している。





ちょっとー!
なにー?

めっさえぇ名前ちゃうーん!

幸江ばあちゃんありがとう!



んんっオホン。



この名に恥じぬよう、

神様に誉れを授けて戴けるよう、

神様に喜んでいただけるよう、

生きてゆかねば。







こりゃ大変だ。w


黒田誉喜









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O2

photo:01




「 酸素 」


   
ひとつぶの原子が 

   
晴れ渡った空に流れた。

   

   
虹も月も僕も

   
最大限分解すれば 
みんな同じだろうか。

   
   
僕の気持ちは 
元素記号では表せないけれど

   
   
僕の涙は 
水素ふたつと 
ひとつの酸素と

   
少しの塩化ナトリウムで 
できている。


    
     
僕は 
どうやったら

     
君への想いを結晶にできるか

     
ずっと考えているのだけれど

     
     
時折 
笑う君の仕草に

     
そんなことは 
すぐに忘れてしまうんだ。

     

        
君と僕の結晶


         
それは


      
永遠に解き明かせない
ふたりだけの秘密

      

            
それは

      

        
静寂の音を奏でている時の波紋

   

      
刹那が忘却の彼方まで続く 
時のわだち。

   
         
晴れ渡る丘のうえ

       
地球に背を向けて 
深呼吸をする。

       
からだいっぱいに 
酸素を吸い込み

       
ゆっくりと 
二酸化炭素を 
吐き出す。


        
僕は、それを 
生まれて死ぬまで

         
ずっと続けて 
ときに笑う。

          
植物たちは 
それを歓迎し

            
酸素を与える。

   
             
僕も君も

           
ちがうかたちで

            
呼吸を続ける。


          
ふたりが 

ふたつとない


           
ひとつの結晶になるその日まで。







Present for Uriru


黒田誉喜









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愛の影

photo:01








「 愛の影 」

愛の影を踏んだ。

まどろみの闇に身を委ね
省みない帰り道

横断歩道を跨ぐ
ひび割れた光

いつか届く
どこか遠く

罪悪の射影
幼き日々の面影

細胞の鼓動が
堕天使の遺伝子を揺さぶる。

螺旋を描く波線
自由落下する夢の群像

血流にも似た時の流れを
ぼんやりと眺めながら

旅する流星群が燃え尽きた時

ふと君を想った。

失われた月明かり

新月に照らされた肉体
星と闇のハーモニー

僕は愛の影を踏んだ。

省みない帰り道の向こうに

若い太陽がにじにじと
昇りはじめた。

網膜に焼きついた君の輪郭

風の体温を感じながら
心の声が軋む音を聞いた時、

星と闇は、
もうそこになく

太陽と愛と
愛の影だけが
そこにあった。



黒田誉喜















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星のうえで






「 星のうえで 」



          

とても静かな星のうえで


          

       
いのちを祈るひとがいたり


          
           

       
祈るひとを 撃つひとがいたり


           
           
       
撃ったひとを 憎むひとがいたり


          
           
       
憎むひとを 愛するひとがいたり

      
           
           
       
愛するひとから 奪うひとがいたり


           
           
       
奪うひとを 産んだひとがいたり


           
          
        
産んだひとを 励ますひとがいたり


             
            
       
励ますひとを 見守るひとがいたり


            
            
       
見守るひとを 支えるひとがいたり


           
            
       
支えるひとのお腹のなかにいる

                

                
            
子供がいたり


             
             

       
お腹のなかの子供の誕生を

             
           
       
ひたむきに 祈るひとがいたりする。



               
             
                  
この

               
とても静かな星のうえで。








ae96 nick truly

2006年12月05日15:10

六年前かぁ。

またまたmixiを読み返していて、
このブログではご紹介してなかったので、アップロードしました。

読んでくれてありがとう。


黒田誉喜









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詩との再会 「 SUBWAY 」


久しぶりにmixiの自分の日記を観ていて、アメブロの読者の方にも観てもらいたくなって、アップロードしました。良かったら暇つぶしにどうぞ。





 「 SUBWAY 」


いつだったかは忘れたけれど

あれは俺がまだ自分の居場所を見つけられずにいた頃の

秋の六本木での出来事だったと記憶している。


ツヤマーリーと俺は ばっちりキメて 
CLUBへと繰り出していた。 


     
店の名前は もう忘れてしまったが

   
黒人の用心棒がドアーを守っているような店で

     
客の80%は不良外国人だった。


    
グラマラスな視線が飛び交う
多国籍な空間。

      
ヤセッポッチのアジアンボーイは

       
まるで用無しと言わんばかりに

       
美女の視線は俺を素通りだった。


   
お立ち台で一心不乱に踊る娼婦のような女たち。

       
男たちはみんな海兵隊に見えた。


   
俺は少々そのハイパーな雰囲気に耐えらなくなり

 
その旨をツヤマーリーに告げて外の空気を吸いに表に出た。


      
街灯に照らされた交差点の向こうに
コーヒーショップが見えた。


      
俺はタバコ-ヒ-でもしようと思い
自動ドアーをくぐった。

         
温かいコーヒーを注文し
風景を眺めることの出来る席に腰掛け やっとリラックスした。


       
カフェインとニコチンのハイボール。


      
血管は膨張と収縮を余儀なくされ

       
脳は錯覚のリラックスを手に入れる。


      
俺はCLUBで手に入れた
フライヤーとペンで

          
言葉を書き始めた。


       
昔から俺の暇つぶしといえば

          
「言葉」だった。


          
言葉の羅列。

      
決して誰にも見せることのない言葉。


       
俺はくわえタバコで紙に向かい

      
紙の上をペンで散歩するように言葉を書いた。


      
退屈そうに言葉たちは行儀悪く紙の上に散らばっていた。

     
     
時折 タバコを吹かし 
夜の路上を眺めた。


       
いい女が黒人に肩を抱かれ 

        
まるで映画の主人公のような歩き方で

           
過ぎ去って行った。


     
俺は また 紙に視線を落とし 
書き始める。


         
時の針は角度を変え 

      
世界がまた少し変化したことを告げる。


       
書く場所がなくなった頃 

   
ツヤマーリーが「SUBWAY」へとやって来た。


    
俺の前の席に座ると同時にタバコに火をつけ、視線を俺へと向けた。


         
「何してたの?」


 
とツヤマーリーは微笑み混じりの
優しい口調で俺に訊ねた。


     
「言葉を書いて暇つぶししてた。」


       
と俺は少し自嘲気味に答えた。


         
 「みせて。」

     
       
とすかさずツヤマーリーは言った。


           
内心 俺は 

      
「えっ?こんなもの見せられねぇ!」

    
と少し焦ったが、
さも平気な振りをして冷静に


           
「うん いいよ。」

        
と、その落書きだらけのフライヤーを

         
ツヤマーリーに手渡した。


         
ツヤマーリーは一読したあと 

            
俺にこう言った。


     
「96ちゃんは 普段から言うこととか発想が面白いから詩を書けばいいのに。」



        
あの日、どんな会話を交わしたか

         
正直全く覚えていないけれど

  
         
この時の「SUBWAY」での 

     
このやり取りは一字一句間違わずに覚えている。




           
俺は思い出した。




     
子供の頃、詩を書いて遊んでいた時のことを。

  
      
詩を書くことがなにより喜びだったことを。


         
詩が大好きだったことを。



 
俺はこれまでの10年間 
まったく詩を書いていなかった。



          
忘れていたのだ。



      
詩人の魂はこの時まで 
熟睡していた。



        
ツヤマーリーのこの一言が 

   
俺の中で眠りこけていた詩人の魂を目覚めさせた。


    
俺はこの日から 
錆びついた感性を取り戻そうと

          
言葉を書き始めた。


        
俺の詩人としての再出発は

       
「SUBWAY」だった。


           
「地下鉄」 


  
まさにアンダーグラウンドを突き進む列車のように

    
ふたたび 俺は詩人として 
駆けはじめた。



2006年08月28日23:54