単純明快
僕はファッションでも音楽でも、なんでもシンプルで単純明快なものが好きです。
毎日ジーンズばっかり穿いてるし、髪型は坊主だし、カラオケはブルーハーツしか歌えないし、オセロは誰にも負けないし。
そんな僕が作るル・ビストロの料理も、もちろん単純明快なものばかりです。
「奇をてらったものよりも、あたりまえに美味しいものを、毎日あたりまえに作りなさい。」
僕がシェフになるという話をした時に、恩師から言われた言葉です。
すごくいい言葉ですよね、どんな職業にも置き換えられるんじゃないでしょうか。
あと10分・・・
あと10分だけ・・・
のつもりが、1時間たってた。ヤバい遅刻だ!
なんて経験誰にもありますよね。
僕も毎朝、眠気と格闘しています。明日こそ余裕をもって起きるぞなんて思って、1時間早く目覚ましをかけてみたり。でも結局朝になったら、余裕があるのを知ってるからまた寝ちゃったり。
朝、出勤しながら今日こそ早く寝るぞって思うんだけど、いざ仕事が終わるとテンションが上がってまた夜ふかししちゃったり。
去年のことですが、僕は尊敬する方からとても素敵な話を聞きました。
夜寝る前に、「明日は寝坊するぞ、遅刻してもいいや。と思って寝るなら寝坊してもかまわないけど、ちゃんと起きて仕事(学校)にいくつもりでいたなら、たかが眠気に負けてしまうのはもったいない。」
という話でした。
毎朝遅刻しないように出勤するなんて、社会人として最低限のルールですよね。
何をくだらないことをつらつらと書いているんだと思う人もいると思います。
でも、僕らには大問題なんです。
僕はシェフなので寝坊しようが遅刻しようが、誰も文句は言わないと思います。
でも僕が毎日そんなことをしたら、他のスタッフはどう思うでしょう。
とかいいながら、今夜も夜ふかし・・・・・
親分
ル・ビストロでは朝の9時から1日が始まります。
シェフだから遅く来るとかはありません、全員同時スタートです。
休憩時間も全員一緒です。若い子が一人で作業をしていて、先輩達が休んでるなんてことは認めません。
帰りも全員で掃除をして、みんなで終わります。
僕は有名店のシェフでもなければ、カリスマシェフでもありません。自分がどんどん動いて引っ張っていくしかないのです。
教えたり、ほめたり、怒ったり、毎日大忙しです。
人が人に教えるってすごく難しいです、パワーもいります。
途中で辞められちゃってへこむこともあるけど、昔の後輩が遊びに来てくれたりすると超嬉しいです。
僕が若い頃には、こんなこと考えれなかったぞっていう様なすげー奴もいます。
ようするに、いろんな奴がいるから楽しいんです。
基本
小学生の頃の僕は、掃除当番をさぼって野球をしに行っちゃうようなクソガキでした。
いまだに家の掃除や洗濯は、あまり得意ではありません。
そんな僕ですが、調理場が汚いのは許せないのです。
どんな仕事にも基本というものはあると思いますが、ル・ビストロでは掃除です。
どんなに忙しくても、遅くなっても掃除だけはしっかりやってから帰ります。
みんなが毎日きれいにしてくれるおかげで、気持ちよく働けます。
掃除がしっかりできるようになると、食材や料理、身の回りにまで気遣いができるようになっていい事尽くめです。
タブリエ ド サプール
料理人なら誰しもスペシャリテ(得意料理)というものがあると思います。
僕は肉料理全般なのですが、特に思い入れがあるのがタブリエ ド サプールという内臓料理です。
これはリヨンの名物料理で、工兵の前掛けという意味です。形が似てるんでしょうね。
この料理、簡単な様に見えて実は手間が掛かるんです。まずハチノス(牛胃)を下茹でするんですが、3回茹でこぼします。これが鼻が曲がりそうなぐらい臭いんです。
それから、玉ねぎ、人参、セロリなどの香味野菜とスパイスと白ワインを入れて、4~5時間やわらかくなるまで茹でます。これでやっと臭みが取れます。
それにマスタードと卵黄を混ぜて塗り、パン粉を付けてバターでカリッと焼きます。
かじれば中はふっかりで、想像しただけで涎が出てきそうです。
それにグリビッシュソースという、マヨネーズにゆで卵、ケッパー、コルニションなどを刻んで混ぜた、タルタルソースみたいなものを合わせます。この酸味がまた合うんです。
華やかなフランス料理に憧れて渡仏した僕が、ガツンとやられた思い出の料理です。
牛魔王
我らがLe Bistroのマネージャー、けんさんを紹介いたします。
もうご来店頂いた方はご存じかもしれませんが。
そうです黒いベレー帽を被った、あのとぼけた男です。
特技はフライパン山の牛魔王のものまねです。みなさん振ってあげて下さい、喜んでやってくれますよ。
そろそろ真面目な話を。
僕がル・ビストロのシェフの話を頂いた時に、まず考えた事がマネージャーを誰にやってもらうかです。
真っ先に思いたったのが、けんさんだったのです。
僕達は以前も一緒に働いていました。
レストランとは料理が美味しいだけでは駄目なのです、ホスピタリティー溢れるサービスも同じ位大切なのです。
ここで彼のことを褒めると調子に乗るから書きませんが、彼は人間が大好きなのです。
僕達は毎日15時間、週6日一緒にいます。なんだか気持ち悪いですね。
LYB豚
わたくし、生意気にもブログなんぞ始めてしまいましたが、つい半年前まではパソコンに触ったことすらありませんでした。
「ダブルクリックって何?」とか言ってました(笑)
さて、今回はビストロ料理の4番バッター、豚についてのお話しを。
豚というとビストロでは最もポピュラーな食材で、頭の先から足の先まで余すとこ無くすべて食べ尽くします。もちろん内臓も、血だって美味しい料理に化けます。
そして僕がこだわっている豚が、広大な富士裾野の朝霧高原でのびのび放牧飼育されたLYB豚です。
これ、ダジャレじゃないです。L(ランドレース)・Y(ヨークシャー)・B(バークシャー)という三種の交配種です。頭文字を取ってるいび豚、やっぱりダジャレでした。
でも、旨いんです!
どう旨いかなんて,そんな野暮なことは書きません。一度食べてみて下さい、びっくりしますよ。
ル・ビストロでもLYB豚は一頭丸々仕入れています。それを解体して、それぞれの部位に合った料理に生まれ変わります。
350gもある骨付きロースは豪快に炭火焼きに。
肩ロースは岩塩包み焼き。
香草でマリネしたバラ肉は炭火で焼いて、ハチミツのソースでからめます。付け合わせはシンプルにレンズ豆だけ。いいですね~こういうのが、シンプルだけどフランスっぽいですよね。
前足や首肉やバラ肉で、パテやリエットやソーセージ、ベーコンなどのシャルキュトリー(豚肉加工食品)を作ります。
このソーセージやベーコンを使って、アルザス地方の郷土料理シュークルートが生まれるのです。
豚足だってカスレの白インゲン豆を煮込むのにかかせません。
まだまだ内臓料理やらローストやら煮込みやら、たくさんあるのに・・・
う~ん、書き切れない。
ようするに、豚肉料理は奥が深いのです。
ランチ
ル・ビストロでは月曜日から金曜日まで1000円でランチをやらせて頂いております。
平日は1000円一本です。この1000円ランチには僕達なりのこだわりがあります。
僕達のお店はビストロですので、お昼は近隣で働いている方達のための食堂でありたいのです。
フランス料理店のランチで1000円というと、そんなに高くはないと思う人もいるかもしれません。けれども、毎日のお昼を食べなくてはいけないサラリーマン、OLの方達にとってはけして安くはないと思います。
それでも週に1回のローテーションに入れて頂けるよう努力しています。
ル・ビストロのランチメニューは、前菜3品、メイン3品の中から一つづつ選べるようになっています。料理はフランスの地方料理や家庭料理です。
そして、午後の仕事も頑張れるようボリューム満点です。
ゆっくりコーヒーまで飲んで、1時間で戻れるようスピードも大事です。
一口に1000円ランチといっても、なかなか奥が深いのです。
はじめまして
僕は恵比寿のル・ビストロのシェフをしております。
このブーろぐでは、僕達のお店の日常や、料理のこと、時々まったく関係のないことなどを、着のみ着のままに綴っていきたいと思います。
まずは僕達のビストロに対する暑苦しい思いを・・・
まあ簡単に言ってしまえば、ビストロっていうのはフランス料理店なんですが、フランス人が日常的に家族や親しい仲間達と訪れるレストランのことです。
日本でも料亭などにはほとんど行かないように、フランス人も星付きレストランなどにはめったに行けません。
僕も高級レストランのきらびやかな料理に憧れて渡仏しましたが、結局毎日食べたいのはビストロ的な郷土料理という思いに至りました。
素朴で豪快で、美味しいからこそ昔から変わらずに食べ続けられているんだと思います。
気の置けない仲間とがっつり食べて、ワインもたっぷり飲む。周りのお客さんに迷惑がかからない程度に騒ぐ。
僕達はそんなビストロという空間が大好きです。
そしてル・ビストロもそんなお店にしていきたいです。