運動麻痺リハビリに重要な3つの期間 | ある脳外科医のぼやき

ある脳外科医のぼやき

脳や脳外科にまつわる話や、内側から見た日本の医療の現状をぼやきます。独断と偏見に満ちているかもしれませんが、病院に通っている人、これから医療の世界に入る人、ここに書いてある知識が多少なりと参考になればと思います。
*旧題「ある脳外科医のダークなぼやき」

前回に引き続いてリハビリの話を続けます。

今回は、
主に、手や足などの運動麻痺について考えられているメジャーな理論を紹介します。

これは、
運動麻痺の回復には3つのstageがあるという理論です。

脳梗塞や脳出血などでダメージを受けた脳の運動繊維が、
どのような経緯をたどって回復に向かうのか?について、

Swayneの 「神経再組織化のステージ理論」というものがあります。

これは2008年に提唱された理論なので、
比較的最近発表されたものです。

これによると、
まず1st stageとして、

急性期の回復メカニズムは残存している皮質脊髄路を刺激して、
その興奮を高めることで麻痺の回復を促進します。

これはつまり、
生き残った部分が失われた分の部分までより一層がんばるということですね。

しかし、
これもずっとは続きません。

この残った部分の頑張りは急性期から急激に弱くなり、
ちょうど3ヶ月程度でなくなってしまいます。

発症直後のリハビリはいかに効果的にこのメカニズムを刺激できるか否か?
が問われるのです。

この残された部分の頑張りがある内にリハビリを効果的に行わなければいけません。

リハビリによって残存している皮質脊髄路を効果的に刺激できれば、
この1st stageのメカニズムだけでも麻痺が回復するのです。

逆に言えば、
発症後早期にほとんど麻痺が回復してしまうような場合は、

このメカニズムが働いていると言えます。

そして、
次の2nd stageでは、

皮質間の新しいネットワークの構築によって回復が起こります。

この現象はちょうど発症から3ヶ月程度をピークに起きるとされます。

ちょうどこの時期には皮質間の抑制が解除され、
大脳の中での新たなネットワークが作られるのです。

これはつまり、
それまでは無かった新たな神経細胞のネットワークが生まれることを意味します。

新たな回路が生まれる事で失われた出力が再建される、
ということです。

このメカニズムは発症6ヶ月目程度まで起きるようですが、
これもまた6ヶ月程度で消失してしまいます。

この1st stageと2nd stage、

ここまでが回復のメカニズムのメインとなるので、
この発症後6ヶ月、つまりは半年までの間に効果的なリハビリを行うことが重要になります。

しかし、
その後回復はもう起こらない、

ということではありません。

6ヶ月以後も持続してリハビリによって強化は促されます。

これが3rd stageにあたるのですが、

このメカニズムは主に神経細胞同士の伝達の効率化によって起こるようです。

神経細胞同士の伝達はシナプスと呼ばれる部位での
化学物質によるやりとりによって行われますが、

このシナプス伝達が効率化することが3rd stageの回復を担います。

これによって、
2nd stageで新たに再建されたネットワークが効率化され、
さらに強化されるということです。

どうでしょうか、
なんとなく、この理論は理解できたでしょうか?

なんだか、神経組織の回復なんて実際は見た事ないけれども、もっともそうに思える理論ですよね。

実際、
これら3つのstageを意識して近年のリハビリは行われています。

各ステージで効果的なリハビリを行うことが最終的に良い結果につながるので、
特に最初の1st 2nd stageを重視してリハビリは行われます。

それでは、
具体的にどのような方法でこれらのstageを意識したリハビリが行われるのか?

これについては次回に続きます。


読んだらクリックしてね↓


このブログの順位がわかります↓


人気ブログランキングへ


当ブログが電子書籍と紙の書籍で書籍化されています。

オンラインでの注文は↓から。是非読んでみてください。




電子書籍↓


サクッと読める!「脳」の話/名月論



¥300円

Amazon.co.jp


紙の書籍↓

誰も教えてくれない脳と医療の話 脳神経外科の現場から/名月 論

¥1,365 Amazon.co.jp
誰も教えてくれない脳と医療の話

¥1,365

楽天


読んだらクリックしてね↓


このブログの順位がわかります↓


人気ブログランキングへ