東日本大震災による東京電力福島第一原子力発電所の事故により、
広く国民に原発の危険性が知れ渡ることとなったが、今から30年以上も前に、
「いつか必ず原発事故が起きる。地元に危険な原発は建てさせない」と住民が反対運動を行い、
原発計画を断念させた場所が全国に34ヵ所ある。

原発阻止し町を守る「燃えあがる 蒲生田原発反対闘争」

原発の火種消した町「漁師、医師ら40年のたたかい」 和歌山県 日高町

『シロウオ~原発立地を断念させた町』30年以上も前に原発の危険を感じ、原発計画を中止させた場所が
【南海トラフ三連動超巨大地震が心配される中、
全国各地の原発再稼働が争点となっているが、
なぜ彼らはチェルノブイリ原発事故や福島原発事故が起きる前に、
危険性に気づき、反対運動を行ったのか。
当時、反対運動に関わった住民など11人にインタビューを行い、
彼らの証言を中心にドキュメンタリー映画、
『シロウオ~原発立地を断念させた町』として約100分にまとめ、
2013年11月末頃に上映を予定している。

・映画製作への想い
福島原発事故が起きるはるか以前、原発立地を断念させた町が全国にいくつもあることを、
『奔流』第7号で知り、衝撃を受けました。
原子力が輝かしい未来のエネルギーとして喧伝されていた時代に、
しかも海外で大事故が起きる前にもかかわらず、
金銭的なインセンティブを断ってまで、なぜ原発を拒否したのだろうかと。

原発を拒否した町の人たちは、数十年も前に
なぜ原発事故を想定内のリスクと考えることができたのか。
賛成派との激しい攻防はどんな風であったのか。
今、原発を断念させた町はどうなっているのか、取材をしたいと思いました。

原発立地を断念させた場所は全国に34カ所あるといいます。
2013年1月、『奔流』編集人の矢間秀次郎氏とともに、
原発立地を断念させた三重県紀北町・大紀町の芦浜原発、
和歌山県日高町の日高原発、徳島県阿南市の蒲生田原発の3カ所を訪問。
反対の立役者となった北村博司氏(芦浜)、
濱一己氏(日高)、椋本貞憲氏(蒲生田)らを取材しました。

彼らに共通していたのは、自らの生活を守り、
子孫に土地や海を引き継いでいくため、
自然を守ることの重要性を強く認識していたことです。
原発は他の発電方法とは違う破滅的なリスクを抱えていることを学者などから学び、
断固として反対運動を行い、原発を阻止したのでした。

私は東日本大震災発生後、福島を中心に何度も被災地に足を運び、
被災地や被災者を取材してきました。
中でも2012年3月に福島原発20キロ圏内に入り、
高放射線量で「死の町」と化した無人の町を見た時の恐ろしさは今でも忘れられません。
我が家に帰れなくなった人の話を聞いた時、
これは福島の人だけの問題ではなく、
遠くない未来に誰もが起こりうる、他人事ではない話だとの思いを強くしました。

東日本大震災から2年。3・11の記憶は急速に風化しています。
今後の日本社会のあり方を考える上で、過去に原発立地を断念し、
豊かな自然と共生して暮らす人々の姿を映像に残したいと思い、
シナリオのもととなった『奔流』編集人・矢間氏とともに、
本映画の製作を進めていきたいと思います。】