新稀少堂日記 -6ページ目

第9366回「朝松健編 神秘界 その7、五瓶劇場 戯場国邪神封陣 芦辺拓著 ネタバレ」

 第9366回は、「朝松健編 神秘界 その7、五瓶劇場 戯場国邪神封陣 芦辺拓著 ネタバレ」です。100ページほどの中編です。歌舞伎に対する薀蓄(うんちく)が数多く織り込まれており、歌舞伎の演題だけでも数十演目紹介されています。

 

 主役の並木五瓶は実在の歌舞伎作者です。『 並木正三の門下、1747-1808。実家は大坂道修町和泉屋。大坂で実績を積んだのち、寛政6年(1794年)三代目澤村宗十郎の推挙で江戸に下り、時代物や世話物に優れた作品を残す。単に「並木五瓶」と言うと、通常はこの初代並木五瓶のことをさす。 』(ウィキペディア)


 そして、五瓶と共に、異次元からの魔クトゥルフと闘うのが勝俵蔵(ひょうぞう)です。最後に通り名となった号(ペンネーム)が明かされます。ところで、文化文政の頃までは、座付き作者の権限は甚大なものでした。歌舞伎そのものをリードしていく演出家でもありましたので、いわば「戯場国(げじょうこく、歌舞伎世界)」での神のような存在でした。


 作者の命ずるままに役者は動きます。しかし、時代は役者中心の歌舞伎へと変ろうとしていました・・・・。江戸期に演じられた歌舞伎のほとんどは、現在では消滅しています。五瓶という歌舞伎作家の名前も、脚本も知る人がほとんどいなくなったと言うのが実情です。


 ところで、鎖国下の日本で唯一国交らしきものがあったのがオランダでしたが、19世紀初頭、オランダはフランスに占拠されました(その後、独立を達成)。その時の出島の商館長が、ヘンドリック・ドゥーフでした。在任期間中にフェートン号事件なども起きています。




 『 長崎のオランダ人は、本来生活必需品をオランダから送られる物資に頼っていたが、本国が消滅している以上、もはや本国からの援助は期待できなかった。ドゥーフは許可を得て長崎市中を出歩いて、日本人との友好に務め、日本の好意を得て生活物資を日本から「借金」という形で援助して貰うことで、この危機を切り抜けた。


 ドゥーフの所蔵している本を、幕府や長崎奉行が相場以上の値段で買い取るなど、日本側も祖国を失いながら祖国の矜恃を保ち続けるドゥーフには同情的であった。この時期も日蘭関係が維持されたのは、ドゥーフの努力の賜と言っても過言ではない。 』(写真を含めてウィキペディアから引用)


 なお、ストーリーの紹介にあたりましては、便宜上、サブタイトルをつけさせていただきます。


「その7、五瓶劇場 戯場国邪神封陣」芦辺拓著

『歌舞伎小屋異変』

 文化三年(1806年)三月、座付き作者の並木五瓶と弟子の勝俵蔵が所属していたのが、市村座でした。ふたりが見守る中、舞台が始まります。三番叟、脇狂言に続いて演じられたのが、「梅柳魁曽我(うめやなぎ さきがけ そが)」でした。演出として異様だったのが、本舞台背後の真っ黒の幕でした。


 芝居が始まりますと、客席から「こりゃあ、『鯨のだんまり』じゃないですか。何者かが鯨の腹を切裂いて出てこようという趣向ですよ」と言う声が上がります。確かに海賊の親玉風の男が現れてきます。しかし、異変が生じたのは、まさしくその時でした。


 舞台の上の空間が突如切り開かれたかのごとく異世界が出現したのです。そして、それと共に現れたおぞましい異形の怪物たちは、俳優も客たちも次々と呑み込んでいきます・・・・。この後は混乱ばかりが芝居小屋を包み込みました。その様子を五瓶も俵蔵も見ていましたし、多数の目撃証言もあります。


 同様の変事は、近くで興行していた中村座でも起きていました。両所に乗り込んできたのが、意外にも水戸藩「小石川彰考館」の藩士たちでした。高飛車に歌舞伎関係者だけでなく町方の役人を怒鳴りつけます。水戸藩としても、この事件に何らかの関与をしているようです。彼らには、事件を封殺する意図がありありとうかがわれます。


 五瓶がのちに十返舎一九から聞いた話では、戯作作者たちも同様の光景を目撃していたそうです(ここまでの展開でも、数々の歌舞伎の演目が紹介されています)。


『牛車火事(丙寅の大火、文化の大火)』

 翌月の四月、オランダ商館長(カピタン)ヘンドリック・ドゥーフの一行が将軍に招かれ拝謁に来ます(史実?)。一方、五瓶たちも変事について調査を進めていました。そんな五瓶たちが情報源として接触したのが、当時極めて顔の広かった森島中良(ちゅうりょう)でした。平賀源内の弟子的な人物です。


 森島が斡旋の労を取って紹介したのが、幕府の監視下にあったヘンドリックでした。オランダ人の彼ならば、異次元からの怪物の正体を知っているのではないか、との考えからです。たしかにヘンドリックは知っていました。彼が語ったのが、オランダ仮名で書かれた発音不能な「CTHULU」なる単語でした。


 クチュルー、クトゥルフ、クトゥルー・・・・、結局、五瓶はクトゥルー(邪神)と呼ぶことにしました。そして、ヘンドリックは謎のアラビア人アブドゥル・アルハザードが記したネクロノミコンなる書物についても明らかにします・・・・。


 異変が生じたのは面会から間もなくのことでした。ヘンドリックスの手記「ヅーフ日本回想録」によって当時の火災の様子が記されています。出火したのは、ヘンドリックが宿泊していた長崎屋から二里ほど離れた場所でしたが、火のまわりは早く、大名小路、日本橋、京橋、神田などを次々と焼きつくしていきます。


 『 明暦の大火、明和の大火と共に江戸三大大火の一つといわれる。丙寅の年に出火したため、丙寅の大火とも呼ばれる。出火元は芝・車町の材木座付近。午前10時頃に発生した火は、薩摩藩上屋敷・増上寺五重塔を全焼。


 折しも西南の強風にあおられて木挽町・数寄屋橋に飛び火し、そこから京橋・日本橋の殆どを焼失。更に火勢は止むことなく、神田、浅草方面まで燃え広がった。翌5日の降雨によって鎮火したものの、延焼面積は下町を中心に530町に及び、焼失家屋は12万6000戸、死者は1200人を超えたと言われる。 』(ウィキペディア)


 しかし、この大火の後にはクトゥルーなる魔の跳梁がぴたりと止みました。そして、その年の九月に物語は進みますが、今一度、大火直後の様子が描かれます。その年の六月、月番交替の南北町両奉行所が芝居作家と戯作者たちを招集したのです。


『歌舞伎による妖魔封じ』

 当時、北町奉行は小田切直年、南町奉行は青山忠裕でした。表向きは歌舞伎小屋の消失を受けての呼出吟味でしたが、実質的には芝居・戯作を通じて妖魔を封じろとの要請でした。ところで、現代でも使われている「耳袋」は、青山奉行の随筆集のタイトルから取られています。


 一同は知恵を絞ります・・・・。ここで著者は、赤穂事件を例にとり、歌舞伎について解説します。赤穂事件をそのまま元禄の事件として描けなかった浄瑠璃・歌舞伎たちは、時代を曽我兄弟の時代に求めました。


 これが歌舞伎「世界」の縦糸とすれば、「東海道四谷怪談」などは新たなキャラクターを加えて編んだ横糸であると説明します。妖魔の世界も歌舞伎などの物語世界も一体であると考えられていた時代、歌舞伎によって妖魔世界を封じ込むことは可能だと、奉行も並木五瓶たちも考えていたのです。そして、町奉行所の支援によって着々と準備が進みます・・・・。


 一方、異変が続いていたのが、水戸藩邸でした。中に入れたものの成長に合わせたかのごとく、離れが大きく改築されているとの流言飛語が流されていたのです。周辺には実に不愉な臭いが流れ出し、薄気味の悪いうめき声がしているとの噂でした。


 明らかに水戸藩邸が今度の事件の発端です。森島中良は、日本に入って来た魔道書ネクロノミコンを水戸藩が購入し、何らかの行動を起こしたことが原因ではないかと推理しています。そして、九月十二日、並木五瓶と勝俵蔵が見守る中、運命の顔見世興行が始まります。


 その頃、邪神は哄笑に打ち震えながら、その巨体を異次元の穴に押し込んでいました。そして、長い触手を放ちます・・・・。同時刻、三立目で松本幸四郎演じる為朝のいでたちで雄々しく姿を見せていました。そして、四立目、約束どおり舞踊劇をもってきます。


 頼朝、北条政子が、それぞれ玄宗皇帝、楊貴妃に扮して華麗に舞い踊ったのです。五立目、このパートは勝俵蔵のシナリオです。本舞台いっぱいに恐怖と戦慄の世界が繰り広げられます。そのために、鬘(かつら)師の友九郎がその辣腕をふるって特殊メイクを手掛けています。


 芝居は続きます・・・・。「終った!終った!」、舞台関係者から次々と安堵の声が上がります。一方、中村座でも無事公演を終えていました。ところが、小屋の近くから火の手が上がったのです。火元は、鬘師・友九郎の家からでした。使わなかった特殊メイクが発火したのです。


 火の手はまたたく間に燃え盛り、近くにあった市村座、中村座の小屋を燃やします。「決着をつけるぜ!」、五瓶は勝俵蔵に声を掛けます。そして、台本を火の中に投げ込みます・・・・。


『エピローグ その後の日本』

 変事は無事落着しました。三月の変事で姿を消した客たちが無事戻ってきました。並木五瓶は二年後に亡くなり、その後、勝俵蔵は名を改め、鶴屋南北の名前で「東海道四谷怪談」を発表しました。しかし、歌舞伎の世界も大きく変わっていました。


 ですが、騒動は決着したと言っても、水戸藩はこの騒動を契機に、結局幕府をつぶすことになり、さらに数十年後、日本を敗北に導くことになりました。


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第9365回「世界一優美なワイン選び その10、ジンファンデル その11、ピノ・ノワール」





 第9365回は、「世界一優美なワイン選び ジェラルド・アシャー著 その10、ジンファンデル(カリフォルニア) その11、ピノ・ノワール(オレゴン)」です。この2章は、いずれもアメリカ産のワインです。


「その10、ジンファンデル(カリフォルニア)」

 これまで、章につけられたサブタイトルはいずれも地域名称でしたが、今回のジンファンデルはブドウの種類を指しています。


 『 プリミティーヴォ (Primitivo) は、イタリア共和国南部のプーリア州とアメリカ合衆国カリフォルニア州を中心に栽培されている、赤ワイン用ぶどう品種である。ジンファンデル (Zinfandel) と呼ばれることも多い。


 クロアチアで栽培されていたマイナーな品種であるツーリエンナーク・カーステラーンスキー(Crljenak Kaštelanski)がアドリア海を超えてイタリア半島にもたらされて「プリミティーヴォ」と呼ばれるようになり、また別のルートでアメリカ合衆国に移入されたものが後に「ジンファンデル」と呼ばれるようになったと考えられている。


 イタリア語名のプリミティーヴォは、「最初の」、「一番目の」の意味からで、この品種が比較的早く熟すことによる。 』(冒頭の写真を含め、ウィキペディアすら引用)


 サブタイトルは、「秘蔵の地酒でキッチンパーティ」と付けられています。リーゾナプルな価格のワインをちょこっと開けて飲む・・・・、至福の一瞬です。私もジンファンデルには随分お世話になりました。著者のアシャーは、冒頭にこう記しています。


 『 わが家のキッチンには、小さな円卓がある。・・・・ キッチンで開けるワインは、どこの誰が造ろうが、ともかく気持ちがなごみ、人好きのするものがいい。妙に挑むようなものはご免で、飲み手を元気づけてくれなくては困る。その点、「上出来」のジンファンデルほど、この条件にズバリ当てはまるものはない。 』(塚本氏訳)


 20世紀前半、地域を問わず、アメリカの醸造家に待っていたのは禁酒法の壁でした。当然、大きな空白期間を作りました。そして戦後、ワインづくりに尽力してきた個別の具体的な栽培業者(=醸造業者)について紙数を費やして説明していきます。


 その中でも、著者が力説しているのが、ワインはブドウ種であるジンファンデルから決せられるのではなく、カリフォルニアと言う「風土」から特徴がにじみ出てくるものだ、ということです。そして、南北に長く広がるカリフォルニアにおいては、極めて多種多様なジンファンデル・ワインが生まれていると語ります。




「その11、ピノ・ノワール(オレゴン)」

 章のタイトルとなっている「ピノ・ノワール」は、ワイン用ブドウの一種です。ただし、対象としている生産地はオレゴンに特定しています。


 『 ピノ・ノワールは、葡萄の品種の1つで、時にヴィニフェラとも呼ばれるヨーロッパ・ブドウの系統であり、フランスのブルゴーニュを原産地とする。殆ど黒に近い、紫みを帯びた青色の果皮を持ち、主に醸造に使用され、赤ワインを造る代表的な品種の1つである。また、時としてこの品種から造られたワインそのものも指して呼ばれる。


 もう一つの代表的赤ワイン用品種である カベルネ・ソーヴィニヨン種とあらゆる部分に於て対照的な品種であり、ピノ・ノワール種を用いた赤ワインは比較的軽口で、渋み、タンニンが少ない。このため、カベルネ・ソーヴィニヨン種が上級者向けといわれるのに対し、ピノ・ノワール種は、テンプラニーリョ種と並んで、赤ワイン初心者向けと宣伝されることも多く、軽口で飲みやすいものが多い。 』(写真を含め、ウィキペディアから引用)


 章の冒頭部分を引用することにします。

 『 仕事柄、私はワイン業界の祭りや見本市などに顔を出すことが多い。見かけによらずしんどい稼業だが、中には文句なく楽しめる催しがある。オレゴン州マクミンヴィルで開かれる、国際ピノ・ノワール祭がそれ。87年以来、毎月7月の最後の週に行われる。


 会場は田舎町の片隅、木陰に覆われたキャンパスの中の赤レンガ建て大学校舎。とりわけ魅せられるのは、催しそのものが陽気で、かつ気どりがない点だ。ワイン、中でもピノ・ノワール酒をひたすら楽しく飲もうという雰囲気が町中にみなぎっている。・・・・ 』(塚本氏訳)


 そして、参加者はいずれも知的であり、世界各国から参加しているとのことです。ただ、日本人が参加したとは書かれていません・・・・。そして、肴として供されるのがオレゴン料理、土曜の夜にはランタンなどが吊り下げられるそうです。


 著者は西部開拓時代から書き起こして、オレゴンのワイン史について触れます。禁酒法の影響は比較的少なかったそうです。現在のボトルあたりの値段もリーゾナブルですし、飲みやすい「赤」かと思います・・・・。


 次回から、ワインの旅はふたたびヨーロッパに戻ります。


(追記) 「世界一優美なワイン選び」につきましては、随時取り上げていく予定です。過去に書いたブログに興味がありましたら、お手数ですがブログトップ左側にあります"ブログ内検索"欄に"アシャー"と御入力ください。

第9364回「創元・岩波ウェルズ傑作選 その3、バイクラフトの真実、その4、水晶の卵、ネタバレ」

 第9364回は、「創元・岩波ウェルズ傑作選 その3、バイクラフトの真実、その4、水晶の卵、ストーリー、ネタバレ」です。


「その3、バイクラフトの真実」(奇妙な味)

 インド系の血が何分の1か入っているイギリス人紳士、フォーマリン青年の一人称で語られます。


 クラブでフォーマリンに視線を送り続けているのが、デブのバイクロフトです。不愉快な奴、・・・・、だから、フォーマリンは手記の形で洗いざらいバイクロフトのことを書いてやることにしました。


 フォーマリンの浅黒い容貌をことさらに口にしたのがバイクラフトでした彼は暗にインド人の血が入っていることをあてこすっていたのです。ですが、バイクロフトの本当の狙いは痩身術にありました。インド伝来の秘法を教えてくれとせがんできたのです。


 いったんは、「ブタのように喰うやつはブタになる」と断ったのですが、その執拗さについに根負けし、祖母の「重量」軽減の秘伝を授けることにしました(伏線です)。フォーマリン青年は、幼いころにわずかにヒンヅー語を習っていますが、古紙に書かれた文書すべては解読できませんでした。


 それでも大方のことは分かりましたので、バイクロフトにメモを渡すことにしました。2週間後、彼から連絡がありましたが、やはり効果はなかったそうです。フォーマリンはレシピを再確認し、代替物で可能なものを除いて、ひとつひとつ指示どおりにするように伝えます。

 

 それから一月も経った頃でしょうか、バイクロフトから支給来られたしとの連絡が入りました。家政婦に案内され、彼の部屋に入りますと・・・・。誰もいなかったのです、ですが、上を見上げるとバイクロフトは天井に張り付いていたのです。まさしく、バイクロフトは風船のようになって浮かんでいたのです。


 責任はすべてバイクロフトにあり、と考えているフォーマリンでしたが、親切にも泊まり込んで、いろいろと部屋の改造をしてやります。たとえば、上から下への手すりとか、ベッドを天井に逆向きにするとか、このような体でも快適に過ごせるような、あらゆる利便性を提供してやりました。


 実は、フォーマリン青年はここで辞めるべきだったのです。最高のアイデアをバイクロフトに教えてしまったのです。それが、今日も3メートルの距離で、バイクロフトが一心にフォーマリン青年を見つめる結果になってしまいました。


 「下着をなまりで作るんだ、靴もズボンも、そうすれば、普通に歩けるさ、クラブにも来られるよ」、こうして、フォーマリンは嫌なバイクロフトと顔を合わせ続けています・・・・。


「その4、水晶の卵」(異次元テーマ)

 『 骨董屋に置かれた水晶球のお話です。その卵型した大きな水晶は、常にショー・ウィンドウに置かれています。しかし、その水晶球は、異次元の世界を映すのです。科学者は、同じ水晶球が別の世界にもあり、お互いが感応しあっていると推断します。


 小説では、異次元世界を火星としていますが、もっと別次元の世界にしていましたら、物語の深みはさらに増したと思います。 』


 後半のコメントは、時代背景を考えない軽率な感想だった、と今では考えています。

第9363回「トリック 山田奈緒子関連本 その4、遠隔殺人に秘められた真実ストーリー、ネタバレ」





 第9363回は、「トリック 山田奈緒子関連本 その4、遠隔殺人に秘められた真実(パントマイムで人を殺す女) ストーリー、ネタバレ」です。ブログテーマを「連続ドラマ」としていましたが、関連本につきましては、メタ・ミステリ的な内容となっていますので、「ねたばれミステリー」に変えさせていただきます。


「パントマイムで人を殺す女 ストーリー」(既に書いているブログから再掲)

 『 卵が割れるオープニングに始まり、薀蓄(うんちく)エピソードが始まります。今回は、丑の刻(うしのこく)参りで呪殺しようとした実話です。いわゆる"不能犯"として殺人未遂は適用されませんでしたが、本件では恐喝の罪で告訴されたようです・・・・・。


 東京の治安を守り続ける矢部警部補(生瀬勝久さん)が、一人の女性同伴で、上田助教授(阿部寛さん)の研究室にやってきます。一緒にやってきた黒坂美幸は、パントマイムだけでこれから3人を殺すと言うのです。矢部の依頼は、一晩、美幸と過ごして欲しいとの依頼です。


 嬉しいのか、恥ずかしいのか、怖いのか、上田は山田奈緒子(仲間由紀恵さん)も一緒に泊り込むように頼みます。報酬は5か月分の家賃。奈緒子は答えます。「キャーーシュッ」 そして、その晩、第一の殺人が起きます。殺す人の名前を告げた上で、首を絞めるマイムをします。


 その通りの状況で、遺体が発見されます。現場の遺留品には、美幸の指紋が・・・・。そして、第二の殺人、今度は刃物で刺すマイムをします。美幸の衣類には、被害者の返り血が・・・・。しかし、不能犯です。これだけでは、逮捕状はおりません。


 最も単純な解釈は、共犯の存在です。指紋は事前に付け、返り血も、被害者の血を事前に手に入れ、共犯者が殺人を実行したという推理です。


 上田は、1時20分から始まる「哲!この部屋」(凄いオヤジギャグです)で、"双子大会"をやっているのを見ます。美幸には双子がいました。美幸がパントマイムを演じ、双子の洋子が殺人を実行する・・・・・。そして、2時45分、双子の姉妹を呼び寄せます。その場にかかってきた電話で、第三の殺人が・・・・。


 その時も、美幸は、拳銃を撃つ真似をしています。今までの殺人は、洋子が実行していました。では、今回はだれがやったのでしょうか。機械的なアリバイトリックです。パソコンとテープを使って、2時45分に電話がかかるようにしていただけです。実際の犯行は、1時頃です。


 洋子は、全ての殺人は、自分が実行したと自白しますが、その時、・・・・・。洋子は、毒を飲んでいたのです。美幸を見つめます。美幸は、「全て洋子がやったこと。私はパントマイムを演じただけ、先生、超能力で人は殺せないと法廷で証言してね」(要旨) 捨て台詞を残し、去って行きます・・・・・。


 このエピソードでは、奈緒子の母親である里見が、多くのシーンで登場しています。これまでに、父親についても触れられています。父親は超能力者を自称する人物に殺されています。完結編で奈緒子は犯人と対決するのでしょうか。


(備考) 写真は、「丑の刻参り」です。ウィキペディアから引用しています。 』(以上、再掲)



「山田奈緒子の視点」

 当時、堤幸彦監督はキャラをいじるのが大好きでした。山田奈緒子は貧×、上田次郎は巨○、矢部はハ△・・・・。すっかりイメージが定着しました。以下、山田奈緒子の一人称で書くことにします。


 今回の依頼者はまたしても、35歳童貞の上田です。超売れっ子の"私"でございますが、今どきのマンションとは異なりアットホームな雰囲気の中、大家のハルさん、隣人のジャーミーくん共々、障子貼りとか掃除なども致しておりました。上田は、美幸さんという若い女性と一晩過ごせるということで、嫌らしいほどワクワクしています。


 一方では、「一晩は、男女が過ちを犯すには十分な時間だ。ぼくは過ちは嫌いだ」とかなんとか、ぬかしておられましたが、女性に対して自信がないと言うのが一目で分かりました。そして、事件は次々と起きていきます。予言どおり、美幸さんがパントタイムをしたとおりに、具体的な人物が殺されていったのです。


 しかも、指紋など美幸さんが犯人であることに間違いない重大な物証をわざと残しての犯行でした。その間、上田も私も彼女と一緒にいたのですが・・・・、もちろん、上田は虚勢を張って、「ぼくは物理学者としての立場から、超能力や霊能力など一切を否定しています。如何なる現象でも、科学で説明可能です」と・・・・。


 「完璧なアリバイだって?そりゃあ、双子だ。でも助教授の口からそんな陳腐なミステリのようなことは口にできない。山田、おまえが話せ」などと言うんでございます。"「おまえのやったことは全部お見通しだ。おまえは双子だ!」、恥ずかしさで顔が真っ赤になりました。


 ところが、美幸さんはあっさり認めたんです、物陰から瓜二つの洋子さんという女性が現れました。そして、洋子さんはすべての罪を告白した後、毒を飲まされて亡くなりました。ですが、美幸さんは最後までシラを切って、白い牛乳を飲んで立ち去って行ったんです・・・・。


 死人に口なし、不能犯である以上、法も美幸さんを裁けない、悔しいじゃありませんか。


(追記) 「トリック 山田奈緒子関連本」につきましては、随時取り上げていく予定です。過去に書いたブログに興味がありましたら、お手数ですがブログトップ左側にあります"ブログ内検索"欄に"奈緒子関連本"と御入力ください。

第9362回「創元・岩波ウェルズ傑作選 その1、蛾、その2、奇跡を起こした男、ネタバレ」





 第9362回は、「創元・岩波ウェルズ傑作選 その1、蛾、その2、奇跡を起こした男、ネタバレ」です。H.G.ウェルズの中短編につきましては、創元文庫版「ウェルズSF傑作集」(全2冊)で既にブログに取り上げています。


 一方、岩波文庫でも、中短編集を刊行しています。読者のイマジネーションを駆り立てる作家ですので、創元版を補充する形で取り上げることにしました。


 なお、掲載順ではなく、ランダムに取り上げていこうと思っています。。ところで、創元版に基づき既に取り上げている作品につきましては、詳細には書いていません。手抜きとなりますが、再掲することにしました。


「その1、蛾」(奇妙な味)

 この作品を読んで連想するのが、ポーの「スフィンクス」とアシモフの「神々自身」です。前者は日常レベルでの怪物の出現(?)、後者は学者同士の抑えきれない反目です。反目と言うより、嫉妬と言う方が正しいと思います(文末に、既に書いているブログから、「スフィンクス」とアシモフ短編「新聞記事」を再掲することにします)。


 ウェルズは学者同士の争いを神学論争と評しています。この「蛾」も、嫉妬と疾(やま)しさが生み出したモンスターです。


 昆虫学者のハブレーとポーキンズの確執・抗争は、地質論争におけるイングランドとスコットランドの争いにも比肩される、と著者は語ります。


 『 科学の探究者をつき動かす情熱や、反論によってかきたてられる激怒がいかなるものか、一般の人には想像もつかないことだろう。それは「神学者同士の憎しみ」の新たな形態なのだ。 』(橋本槇矩氏、鈴木万里女史共訳)


 ふたりの憎悪は数年来続いていました、事あるごとに、一方が他方を攻撃していたのです。当然、攻撃された方は、それを上回る反撃を試みます。容貌・性格とも対極的なふたりが罵り合っていたというのが実情なのですが・・・・。


 いずれも極めてプライドが高いのですが、ハブレーはより攻撃的で弁が立ちました。一方のポーキンズは醜悪な肥満体であり、口下手でもありました。当然、若い学者たちはハブレーを応援します・・・・。



 そんな中、当面の議論となったのが、ポーキンズが永年温めていた「ドクロメンガタスズメの原中胚葉細胞」についての論文でした。ハブレーはここぞとばかり攻めたてます。ところで、ドクロメンガタスズメとは、写真を見て分かりますように蛾の一種です。


 学者仲間たちの見守る中、論戦の火ぶたを切ったのはハブレーの方でした。昆虫学会はポーキンズの反論を野次馬的な期待をこめて見守っていました。しかし、ポーキンズは反論する前に、インフルエンザのために亡くなってしまったのです。


 しかし、死せるポーキンズは痛撃な反撃を加えます。ハブレーは疾(やま)しさの中、幻覚が見え始めたのです。実在しない蛾が、常にポーキンズの顔に見えたのです。その幻視は、ハブレーの異常行動として現れました。下宿の女主人は脅えます・・・・。もちろん、彼女の目には蛾など見えません。


 そして、狂気に追い込まれたハブレーは、ついに精神病院に収容されます。それが蛾をめぐる「神学論争」の結末となりました。。



「エドガー・アラン・ポー著 スフィンクス」

 『 コレラがニューヨークに蔓延した年、"わたし"は、友人に招かれ、コレラ禍を避けることにした。異変が生じたのは、別荘の窓辺に腰掛け、本を読んでいたときだ。黒く巨大な怪獣が、山の斜面を移動していた。軍艦ほどの大きさをしており、胸部には髑髏が描かれていた。


 "わたし"は、コレラ騒ぎでの緊張から生まれた幻覚だと自らを納得させることにした。しかし、再び、怪獣を見たのだ。"わたし"は、怪獣の正体を友人に詳細に語って聞かせた・・・・・。


 "わたし"の話を聞き終わると、友人は一冊の本を取り出し、先ほど前まで"わたし"が座っていた椅子に腰掛けた。本は博物学に関する図書だった、友人は該当ページを指し示す。そこには「鱗翅目(りんしょうもく)、薄暮族、スフィンクス種」と書かれていた。蜘蛛だったのだ・・・・。


 「きみは、目から1/16インチ(1ミリ強)の距離で蜘蛛を見ていたんだ。怪物の正体について、きみが詳細に語ってくれたからすぐに分かった。いま、ぼくの目の前に、蜘蛛の巣が間近にある。その蜘蛛が移動すると、山の斜面を移動しているように見えるんだ」


(蛇足) 私の体験でも、ガラスに張り付いた蛾が背景と溶け合い、巨大怪獣に見えたことがあります・・・・。 』(以上、再掲)



「アイザック・アシモフ著 死亡記事」

 『 アシモフは、学者同士の嫉妬について数多くの長短編を書いています。この短編も学者の嫉妬を扱う一方、学者の妻の不満も取り上げています。「金の卵を産むがちょう」と並んで好きな一編です。


 ここでは、タイムマシンが取り上げられています。マウスの実験では、3日先に送り、再度現在に戻したマウスは亡くなっています。理由は分かりません。その間、そのマウスは現在と共に生き続けています。そのため、同じマウスが2匹いることになります。生きているマウス(本物)と死んだマウス(精巧なコピー)・・・・。


 しかし、転送先の3日目になると死んだマウスは消滅します。不朽の名声を求めるランスロットという学者は、そこで一計を案じます・・・・。(以下、ストーリーについて書いています)


 物語は、ランスロットの妻の独白で進行します。結婚当初は、新進気鋭の学者だったランスロットも、同業の学者に対する妬心が強くなってきました。ランスロットが劣っているという訳ではないのですが、何故か他の学者に先を越されるのです。


 そんなランスロットの苛立ちは妻に向かいました。いつしか妻にも殺意が湧きます。ただ、ランスロットは言葉の暴力は使いますが、決して手を挙げたりはしません。そんな時に、ランスロットが3日間研究を手伝ってくれと言い出したのです。妻も不承不承、従います・・・・。


 ランスロットが、冒険に出たのには理由があります。同業の学者が亡くなり、死亡記事が出たことが動機となりました。自分が死んだら、どのような記事に・・・・、と考えたランスロットは、現在研究中のタイムマシンで一挙に賭けに出たのです。


 自分自身をまず3日先に送ります。すると、生きている自分と死んでいる自分が存在することになります。死んだ自分を医者に死を確認させた上で、妻に葬儀社と新聞記者を呼ばせることにします。その間、ランスロットは研究所に隠れています。そして、3日後にマスコミの前で生き返ってみせるという計画でした。


 確かに成功しました。死体の近くに青酸の瓶を置いてありますので、実験中の事故だと医師も警察も考えました。研究所には彼一人だということにしていたからです。実際事件性はありませんので、ランスロットの思惑通りに計画は進みました。死亡記事も出ます・・・・。その間、遺体は研究所に安置されていました。


 そして、3日後、ランスロットは有頂天になっています。「コーヒーを淹れてくれないか。まずはコーヒーで祝杯だ!」、以下、最後まで書きますのでネタバレになります。


 コーヒーを飲んだランスロットは倒れます。妻が青酸を入れていたのです。柩にいれていた死体は消失しました。妻は、殺したばかりの夫の死体を棺に入れ、葬儀社を呼びます。ランスロットは3日前に死んでいたのですから、何の問題もありません。青酸で亡くなっていますので、死体から検出されてもノー・プロブレムです・・・・。


 わずかに気になったのが、死後日数による遺体の状況です。ですが、ランスロットの死は、警察を含めて確認済みです(検死はされていません)。何の不安も抱かず、妻は埋葬を済ませます。裕福な家庭に生まれたランスロットには相当の資産がありました。妻は、その後の人生を楽しみます・・・・。 』(以上、再掲)



「その2、奇跡を起こした男」

 既に書いているブログから再掲します。好きなウェルズ作品です。

 『 主人公は普通の男です。奇跡なんかも信じていません。そんな彼に奇跡が起せる能力が生じたのです。発端は、酒場で起きます。「ランプよ、逆さになって燃えよ」、そう彼がいうと、ランプが空中に浮かび、逆さになって燃え続けたのです。


 驚いた彼は、酒場を飛び出し、自宅で再度試します。間違いなく奇跡が起せるのです。命令どおりに物事が実現するのです。彼は、牧師に相談します。最初信じなかった牧師も、実証されると信じないわけにはいきません。牧師は、地球の回転を止めろといいます。主人公は地球を止めるべき、意識を集中します。当然、地球は破滅します。


 しかし、彼は最後の奇跡を起します。「奇跡が起こる前の酒場にもどれ」、小説冒頭のシーンに戻ります。しかし、彼には奇跡を起す力は既になく、その後に起った記憶も失われています・・・・。 』

第9361回「世界一優美なワイン選び ジェラルド・アシャー その8、コルビエール、その9、ナパ」

 第9361回は、「世界一優美なワイン選び ジェラルド・アシャー その8、コルビエール、その9、カベルネ・ソーヴィニョン(ナパ)」です。コルビエールでフランス編(全8地区)が終わり、ナパからアメリカ編(全3地域)に入ります。


「その8、コルビエール」

 著者のアシャーは、フランス編を締めくくるにあたり、切り口を変えています。「コルビエールのワインを語るには、フランスのワイン史を避けて通ることはできない」、アシャーは女性の友人に、コルビエール及びラングドックのワイン史を語ります。長い話です。


 アシャーはローマ帝国時代から語り始めます。地中海世界を征したローマ帝国の兵士たちは、当時、ガリア人が居住していたコルビエールに植民します。多くの兵士たちは、イタリアに変えることなくガリア人女性と結婚し、この地に止まりワインづくりに励みました。その品質はローマ産のものを上回りました。


 当然、コルビエール産ワインは広くヨーロッパ世界に居住していたケルト人だけでなく、ローマ市民にも愛されるようになります。そのため、紀元92年、元老院の要請により、ドミティアヌス帝は強制的に生産高の半ばを収奪します・・・・。


 その後もローマ帝国などによる強奪は続きましたが、紀元800年、シャルルマーニュ帝が勅許状を出すことにより、政治的にも経済的にも安定しました。ですが、一方ではボルドー・ワインを敵に回すことになります・・・・。そして、時代は19世紀に入ります。この時代、生産者を悩ましたのが、ブドウの病害でした。


 さらに、コルビエール・ワインに敵対する勢力として台頭してきたのが、価格的には安いものの低品質なラングドック・ワインでした。ラングドックはコルビエール村を含む、1980年代にはいりリゾート地として有名になったエリアです。ただ、ワイン・ブランドとしては区別されています。


 最後にアシャーは、アメリカで10ドル程度で買えるリーゾブルな銘柄を紹介しています、あくまで、女性の友人に説明する形で・・・・。私も飲んだ記憶があります。


 『 (コルビエール・ワインは、)フランス南部ラングドック=ルシヨン地方コルビエール村を含むオード県の百数十か村、14400haの畑から生産されるワインで、95%が赤であるが、白やロゼも作られている。AOCを獲得したのは1985年12月であるが、その前のVDQSワイン時代には、今よりさらに多く作られていたため、日本にも多く出回っていた。 』(ウィキペディア)




「その9、カベルネ・ソーヴィニョン(ナパ)」

 ナパを舞台とした名画に、「サイドウェイ」という作品があります。既に書いたブログの冒頭部分を再掲することにします。


 『 第5466回は、「サイドウェイ ワインへの限りない愛着と薀蓄 感想、ストーリー、ネタバレ」です。よく出来たシナリオに裏付けられた良質の映画です。モチーフはワインであり、テーマは人生の"道草"です・・・・。


 この映画は、2009年、日米合作の形で「サイドウェイ"ズ"」のタイトルでリメイクされました。リメイク版につきまして、2回に分けてブログに取り上げています。ストーリーについては、リメイク版を再掲することにしますが、オリジナルのプロットを忠実になぞっています・・・・。 』


 男女4人、1週間の物語です。ナパ・ワインにつきましては、この映画がすべてを語っています。ワインが好きでなくても、人生の半ば、転換点に差し掛かった人には、必見とも言うべき名画です。日本人俳優によるリメイク版では、小日向文代さん、生瀬勝久さん、鈴木京香さん、菊池凜子さんの4人が主演していました。


 ところで、この章のサブタイトルは、「ワインはブドウの木に実る」となっています。ブドウ栽培者と醸造者は一体であるべきだとの主張です。そして、ナパ・ワインが認知されていく経緯を追っていきます。転換点となったのが、1976年、パリで開催されたブラインド・テイスティング方式の品評会でした。フランスのワインをを圧倒したのです・・・・。


 当然、アメリカでのワイン造りの歴史は浅いですので、初期に活躍した醸造家の多くはフランス人でした。彼らは、ワインづくりの原点である「ワインはブドウの木に実る」と主張しますし、著者の考え方とも一致しています。


 最後に、ワイン業者からの引用で本章を締めくくっています。

 『 ・・・・ 濾過をしないことにしているワインは、果実づくりから瓶詰に至るまで、どの段階にも濾過を不要とするための特別の工夫や扱いが施されているのです。かつては無視してきた事柄をもう一度よく考え直す必要があると分かりました。


 たとえば期圧式圧搾機です。今、私たちは月例にそって仕事をしていることをご存じでしょうか。たとえば瓶に詰めるのは、満月が欠け出してからなのです。 』(塚本氏訳)


(追記1) 「サイドウェイ」について書いたブログは次のとおりです。興味がありましたらアクセスしてください。

「オリジナル・ハリウッド版」http://ameblo.jp/s-kishodo/entry-11405160911.html

 ※ 手抜きとなりましたが、キャラクター設定を書き加えた上で、ストーリーはそのまま日本版のものを流用しています。

「リメイク日本版、感想」 http://ameblo.jp/s-kishodo/entry-11046768884.html

「  〃   ストーリー」 http://ameblo.jp/s-kishodo/entry-11046768884.html


(追記2) 「世界一優美なワイン選び」につきましては、随時取り上げていく予定です。過去に書いたブログに興味がありましたら、お手数ですがブログトップ左側にあります"ブログ内検索"欄に"アシャー"と御入力ください。

第9360回「トリック 山田奈緒子関連本 その3、大消失ミラクル ストーリー、ネタバレ」

 第9360回は、「トリック 山田奈緒子関連本 その3、大消失ミラクル ストーリー、ネタバレ」です。最初に既に書いているブログからストーリー部分を再掲することにし、そのあと、「山田奈緒子の視点」を付け加えることにしたいと思います、


「まるごと消えた村、ストーリー」(既に書いているブログからの再掲)

 『 このドラマの冒頭、ロベール・クレマン(?)がエッフェル塔を消したとのエピソードが紹介されてます。「エッフェル塔消失」のイリュージョンを、ネット検索した人は少なくないと思います。正直、よく分らないのです。ネットで検索できないのです。ただ、「ネットで検索できないものは、実在しない」という考えは、明らかに間違いです。


 しかし、自由の女神を消したマジシャンはいます。デビッド・カッパーフィールドです。また、ディズニーランドのシンデレラ城を消したマジシャンもいますし、ナポレオンズは東京タワーを消しました。ですから、一概に堤監督の創作とも思えないのですが・・・・。


 ですが、このエピソードはさらに大きなイリュージョンを展開します。消えたのは村人だったのです。誰もいなくなったのです。捜索のため出かけた消防団も全て、消えてしまいました。そこで捜査を要請されたのが、天才物理学者・上田次郎(阿部寛さん)です。当然、美人で天才マジシャンの山田奈緒子(仲間由紀恵さん)も同行します。


 これだけでも、ストーリーが複雑なのですが、さらに事態を混乱させる矢部警部補が登場します。「強きに媚び、弱きを挫く」、まさしく公務員の鑑(かがみ)です。ただ、山田、上田以上のコンプレックスがあります。頭髪部です。"かつら"などを連想させる語彙(ごい)には、過剰に反応します。


 村を消したと豪語しているのは、"ミラクル三井"と名乗る超能力者です。白塗りの顔で、変なフランス語を、取り混ぜます。そんな三井が、山田の目前で、駐在の警官を消し去ります。そして、「安室奈美恵とウーパールーパーを足して二で割ったような」少女の登場・・・・・。村には、ストーン・サークルを思わせる遺跡もあります。


 村人が消えたことには、説明を付けようと思えば可能かと思いますが、捜索に当たった消防団の消失まで重なりますと・・・・・。さらに、雑木林の中の建物を消し、村につながる鉄橋まで、消失していたのです。


 ミステリで、建物を消失させたトリックとしては、エラリー・クイーンの「神の灯」が有名です。その後、多数のバリエーション作品を生み出しました。では、このエピソードで使われたトリックとは・・・・・・。今さらという気もしないではないのですが、最後まで書きますので、以下ネタバレとなります。


 鉄橋消失トリックは、本来の道路をかくして、崖に続く道に誘導したのです。当然、鉄橋は消失していません。このトリックは、「劇場版2」でも使われています。雑木林の中での建物消失は、鏡を使っています。鏡に反射した映像には、何もない雑木林が映っていたと・・・・。


 駐在の消失は、ミラクル三井と駐在との共謀でした。本当の駐在は、既に殺されています。村人と消防団の消失は、全員による共謀です。ミラクル三井は、実は主犯ではありませんでした。超能力がインチキだと暴露されたミラクルは失意の内に、村に帰ってきました。村人たちは失意のミラクルを徹底的に利用したのです。


 「安室奈美恵とウーパールーパーを足して二で割ったような」少女に秘密があったのです。この村では、昔から25年に一度、神に少女を生贄とささげてきたのです。その儀式の現場を、駐在は目撃したのです。そして、村人に駐在を殺されます。それらを秘密にするために、ミラクル三井の超能力(?)を利用し、村を消し去った・・・・・。


 ミラクル三井は、最後のイリュージョンを見せます。火のみ櫓の上から、自らを消失させたのです。それは、単に櫓の後ろに飛び降りただけです。ミラクルの最後の言葉は、「私は、本当の超能力者に会ったことがある」(私の記憶)です。超能力者の悲しい最期です。


 エンディング・ソングに、鬼束ちひろさんの「月光」が流れます。タイトル・バックは、子どもから骨だけの死者へと変り行く一対の男女が映し出されます。額縁に収まった不気味な映像です。 』(以上、再掲)



「山田奈緒子の視点」

 宝女子村(ほうめこむら)の村人失踪事件に"私"が関わったのは、またしても上田に泣きつかれたからでございます。警視庁からは、矢部さん池田さんも駆け付けてくれました。ですが、村の異常な雰囲気に飲まれた矢部さんは逃げやがりました。


 問題のミラクル三宅は、「羽根飾りのついた派手な帽子、フリル付きのシャツ、刺繍のベスト、白いパンツ、金色に輝くペーズリー柄のマント。顔は濃いメイクが施され、どこから見ても、怪しすぎる!」人物でした(世界的なマジシャンだけに大変な記銘力です、三井の特徴を語り尽くしています)。


 ですが、"私"の目はだませせん、橋の消失などすべて「シンリマナブ(心理学)」を使ったトリックだったのですがございます。上田さんも一時は頭部を吹っ飛ばされたと思われました。上田さんの服を着ており、遺体の巨根からして上田さんの死体だと断定されたからですが・・・・。


 殺されていたのは前田巡査でした。犯人は村人たちでした、ミラクル三井は村人たちに操られていただけなのです。「おまえらのやっていることは、すべてお見通しだ!観念しろ!」、ここで上田も少し役に立ちました。通信教育でカラテをやっていたからです。


 三井は最後のイリュージョンを見せて亡くなりました。最後の言葉が、「愚かな女だ、私は本物の超能力者を知っている」でした。ですが、"私"が問い詰めても三井はそれ以上はしゃべってくれませんでした・・・・。その超能力者が父を殺したのでしょうか。


(追記) 「トリック 山田奈緒子関連本」につきましては、随時取り上げていく予定です。過去に書いたブログに興味がありましたら、お手数ですがブログトップ左側にあります"ブログ内検索"欄に"奈緒子関連本"と御入力ください。

第9359回「世界一優美なワイン選び ジェラルド・アシャー その6、グラーヴ、その7、アルザス」

 第9359回は、「世界一優美なワイン選び ジェラルド・アシャー その6、グラーヴ、その7、アルザス」です。


「その6、グラーヴ」

 サブタイトルは、「グラスの中の魔法、フィネス」となっています。このフィネスって表現が厄介なのです。著者のアシャーも間接的な表現にとどめています。アシャーは、醸造研究所の統括責任者、ドゥニ・デュプルデュー氏の言葉を引用しています。


 『 フィネスのあるワインとは、どういう質のものか定義するのは難しい。けれども、個々のワインについて、どういうフィネスがあるのか述べるのは、もっと厄介です。特定の風味のあれこれワインの中に求めたり特定の成分を次々に探し当てる芸当、つまり分析的にティスティングすることは、フィネスのあるワインとは無縁なのです。 』(塚本氏訳)


 これだけでは分かりづらいと思いますので、「ホームソムリエおーみん」さんのブログから一部引用させていただきます。


 『 「フィネス」とは、偉大なワインを賞賛する時に使う感覚的な用語で、究極にエレガントで、ワインのあらゆる要素が完全に調和したサイコ~な状態を言います。ワインを飲むようになってくると、これはすご~い!!って感動するワインに必ず出逢います。


 例えば、完璧に熟成して飲み頃になっているワインや、最高のバランスを感じるワインなど、圧倒的な格の違いを感じる時に「フィネスを感じる!」と表現してみましょう。 』


 私の場合は、友人がフィネスを口にしない限り自分から話すことはありませんが、「ワインの魂」とか「ワインの本質」とかの意をこめて話すことにしています。


 グラーヴ・ワインは、赤・白双方を生産しているボルドー近郊の地区です。1980年代になって白ワインが高く評価されるようになりました。グラーヴという地名は、砂利から由来しています。著者もそのことに敷衍しています。




「その7、アルザス」

 サブタイトルは、「ワインと料理のハーモニー」です。アシャーは、ワインと料理の調和を強調し、実際指数も費やして熱く語ります。


 『 アルザス地方は歴史的・文化的にドイツとの関係が深く、また気候もフランスのワイン産地の中では一番寒くドイツに似ているため、栽培されているぶどう品種もドイツのものが多く、アロマが豊かな白ワインが多いのもドイツワインによく似ている。


 ボトルも、細長くて明るい緑色のもので、一見するとモーゼルワインとそっくりである。ただし味わいは、ドイツ産に甘口のものが多いのに対し、アルザスワインはすっきりとした辛口がほとんどである。 』(ウィキペディア)




 ウィキペディア子も触れていますが、私自身の認識もモーゼル・ワインに近いものを感じています。ですが、アシャーはそのことを否定しています・・・・。そして、甘口ワインの主流がヴァンダンジュ・クルディーヴだと断言していますが、残念ながら飲んだことがありません。


 最後に、アルザスの別格ワインで締めくくっています。


(補足) 写真はウィキペディアから引用しました。


(追記) 「世界一優美なワイン選び」につきましては、随時取り上げていく予定です。過去に書いたブログに興味がありましたら、お手数ですがブログトップ左側にあります"ブログ内検索"欄に"アシャー"と御入力ください。

第9358回「トリック 山田奈緒子関連本 その2、母之泉 浮かび上がるおっかーさま ネタバレ」

 第9358回は、「トリック 山田奈緒子関連本 その2、母之泉 浮かび上がるおっかーさま ストーリー、ネタバレ」です。今回から、3シーズン15エピソードを取り上げることにします。つきましては、最初に既に書いているブログを再掲し、その後、山田奈緒子の口述筆記から補足する形を取りたいと思います。


 その第1回目は、「TRICK トリツク」全編を通しての原点とも言うべき「母之泉」です。テーマが開示されており、ドラマとしての完成度も高いエピソードです。


 『 堤幸彦監督は、連続ドラマ「ケイゾク」(中谷美紀さん主演)を撮りおえた後、今度は宗教だと書いていました(「ケイゾク 小説版」あとがき)。それを継承してのことかどうかは分りかねますが、新たな連ドラにチャレンジしたのが「TRICK トリック」です。実に弁証法的なドラマです。


① 正(テーゼ)・・・・超能力は実在するという立場です。ドラマに登場する超能力者は、自らの能力で、新興宗教の教祖とかカリスマになっています。もちろん、何らかの利得を得ています。


② 反(アンチテーゼ)・・・・「全ての超能力はマジックで再現可能である」、魔術師フッディーニの言葉を実践するかのごとく、凸凹コンビの山田と上田が活躍します。


③ 合(ジンテーゼ)・・・・それでも、超能力者は存在する、これが明かされるとき、ドラマは終わると思います。


 自称、超売れっ子のマジシャン山田奈緒子(仲間由紀恵さん)は、マジシャンの仕事を首になります。そこの雇い主が提示したのが、「超能力は存在しない。もし超能力の実在を証明した者には賞金を出す」(私の記憶)という広告です。


 広告を出したのは、上田次郎(阿部寛さん)という大学の助教授です。上田には、止むに止まれぬ事情がありました。新興宗教から娘を取り戻すようにと依頼を受け、信仰宗教"母之泉"に乗り込んだのですが、娘を取り戻せないばかりか、教祖ゴッドマザー(菅井きんさん)から、「お前は4日後に死ぬ」と宣告されてしまったのです。


 上田がびびったのは言うまでもありません。そのため、超能力を見破る優秀な人材を求めていたのです。それにまんまと釣り上げられたのが、山田奈緒子です。奈緒子にも切羽詰った事情がありました。超売れっ子のマジシャンにとっては信じられないことなのですが、その日の金にも困っていたのです。


 二人は、母之泉に乗り込みます。教祖は、挑戦的な奈緒子にも悩みを書かせます。そして、ずばり当てたのです。奈緒子の悩みは、シリーズ全体を通してのキャラクター設定になっています。「○○が貧しい」、一方の上田次郎は「××がでかい」、いずれも漢字ニ字で表現できますが、二人のコンプレックスとなっています・・・・・・。「すべての悩みは、水に流しましょう、流しましょう」


 追い打ちをかけるように、ゴッドマザーは、奈緒子が思い浮かべた数字をずばり当てます・・・。さらに・・・・、と言う展開です。上田と奈緒子は次第にゴッドマザーを追い詰めます。上田が捕われ、空中に浮遊しているように見えるトリックを、奈緒子は暴きます(マジックで多用されている鏡トリックです)。


 ゴッドマザーは、教団員に「もうやめましょう」と語りかけます。しかし、ナンバーツーの男の毒矢は、ゴッドマザーに突き刺さります・・・・・。そして、虫の息で、奈緒子に話しかけます。「真の霊能力者は実在する。お前はその者に殺されるであろう」


 このシーズンでは、エピソードの冒頭に、実際のマジックとか超能力者を紹介しています。基本的にコメディなのですが、優れた変格推理ドラマになっています。


 仲間由紀恵さんは、「トリック」が放送される前年(1999年)に、「ガメラ3 邪神<イリス>覚醒」に出演しました。ほんの端役です。ハイキング中に、邪神イリスと遭遇し、殺される役です。仲間さんにとって、「トリック」は記憶に残る作品かと思います。そして、2年後に出演した「ごくせん」で、大ブレークしました。「人間辛抱だ」を如実に示した女優さんです。 』



「山田奈緒子が見た母之泉とおっかーさま」

 上田次郎という平凡な名前の男が抱え込んだ難事件を解決したのは、超人気マジシャンの"私"でございます。報酬の小切手は、上田の目の前で破り捨てました。ですが、なんとマンションのオートロックを解除し、"私"の部屋に入ってきた上田は、破ったはずの小切手を見つけました。


 こうしてやむなく、母之泉に潜入したのですが、ビッグ・マザー(おっかーさま)の超能力の挑戦「読心の儀」を受けた"私"は、悩みごととして貧乳と書いてしまいました。魚の目、水虫、何でもよかったのですが・・・・。ですが、誤解のないよう付け加えますが、Dカップでございます。あくまで、何を書いてもよかったのです。


 おっかーさまは、姑息にも封印した封筒にアルコールを付けて見たんですね、"私"にはすべてお見通しです。上田がびびった空中浮遊も古典的な鏡トリツクだと見破った"私"は、躊躇なく銃を発射しました。もう嫌になったおっかーさまは、毒をあおいだんです。


 「私は本当に人の心が読めるの。あなたの心の闇も、あなたの亡くなった父親のことも・・・・。本物の超能力者は実在するのよ、そして、あなたは超能力者に殺されるわ」


(蛇足) 完結編となる「TRICK トリック劇場版4 ラストステージ」でも、「母之泉」は登場します。この作品もブログに取り上げていますので、興味がありましたらアクセスしてください。

「感想」 http://ameblo.jp/s-kishodo/entry-11750682740.html

「ストーリー」 http://ameblo.jp/s-kishodo/entry-11750708948.html

第9357回「中咽頭癌、入院36~38日目、ホスピス転院から一年、MSコンチンの副作用」

 第9357回は、「中咽頭癌、入院36~38日目、ホスピス転院から一年、そして、突如牙をむくMSコンチンの副作用」です。今回も日記風のメモを残しておきます。


36日目、6月22日(月)・・・・ 主治医と相談した結果、MSコンチンの服用時間については、午前6時30分と午後8時とすることにしました。寝起き時の苦痛が甚(はなは)だしいのも、睡眠時ののどが乾きが原因だと思われるからです。


 レスキュー(緊急)用としては、オプソ5mgから10mgに増量しました。30分後に効果の確認をした後、痛みが治まらなければ、さらに10mg服用することにします。


 ところで、某テレビ局のT支局のディレクターから、個別に撮影取材の説明がありました。パソコンをラウンジに置いているため、頻繁に出入りしています。そのための配慮かと思います。もちろん、私としても若き看護師がテレビに取り上げられることに異論はありませんので、その間、撮影の支障にならないよう行動するつもりですし、その旨申し出ています。


 なお、24分枠で「人生デザイン U-29」というタイトルのシリーズ番組で全国放送されるそうです(放送日は未定)。



37日目、6月23日(火)・・・・ H病院に転院して、今日でちょうど1周年になります。昼食時、タキシードに着替え、ささやかながら個人的な記念のセレモニーをしました。と言っても、昼食のメニューを一品増やしただけですが・・・・。 入院の時期は、結局、通院から11ヶ月後のことになりました。


 一方、昨日(6月22日)の午後から顕著に出始めているのが、MSコンチンの副作用です。主症状としては、強い眠気に襲われています。そして、本日の午前・午後を通じて、強い眠気には不快さが混じってきました。さらに吐き気も・・・・。


 日量120mgのMSコンチンを飲み始めたのは、6月13日のことですので、服用開始から既に10日が経過しています。鎮痛剤の副作用に悩まされるのは、オキシコンチンを日量20mgから40mgに増量した時以来のことです。その際には、増量とほぼ同時に症状が出ていましたし、間もなく順応しています。



38日目、6月24日(水)・・・・ 副作用につきましては、午前中は現れず、ひとまず安心していたのですが・・・・。午後になって突如、牙を向いてきました。不愉快な眠気とかなりの吐き気、頭の中はぽわーとしてほとんど判断停止状態です。


 夕食も、おかゆは完食したものの、おかずはほとんど手を付けていません。転倒事故を起こしかねませんので、食後の散歩も入院後はじめて取りやめました。


 本日は早目に最後の喫煙(屋外)を済ませ、早目にベッドに入ろうと思っています。病人としては当たり前のことなのですが・・・・。


(追記) 決して愉快な内容ではありませんが、ブログテーマ「ガン日記」に興味がありましたらアクセスしてください。

http://ameblo.jp/s-kishodo/theme-10081936925.html